今日は、山本周五郎の「橋の下」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
橋の下から、世間をぼんやりと観察する、男がいる。どうもかつては家柄のよい武士で、ある時を境に零落したらしい。老翁は、ぐうぜん訪れた若い侍に、このように述べます。
「この橋の下には、人間の生活はありません」と老人は静かに話を続けた、「こういうところで寝起きするようになってからの私は、死んだも同然です、橋の上とこことはまったく世界が違いますが、それでも私には、橋の上の出来事を見たり聞いたりすることはできます、世間の人たちは乞食に気をかねたりはしませんし、もうこちらにも…………
果たし合いのそののちの世界が描きだされます。現実には、劇的な場面よりも、そのあとの時間のほうが長いわけで、山本周五郎はその通常なら記されてこなかった「それから」を描いていました。
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