ボイスブックス「薬草取」

 今日は、ボイスブックス「しゃべる文庫」を配信します。画面左下に表示される( ♫ )ボタンをクリックすると、朗読が始まります。
 第5回は泉鏡花の「薬草取」です。
 九歳の高坂少年が神隠しにあって、山の奥ふかくで迷っていると、美しい娘にみちびかれて……母の病を治す薬草を手に入れる……美女ヶ原での幻想的な記憶をたどる、物語です。
 

縦書き文庫の装画

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(総ページ数/約200頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  宮沢賢治も重んじた法華経……

これがまず記されています。内容は「薬草のたとえ」というもので、現代語にするとこうなのです。クリックで表示されます。

日光掩蔽  地上清涼  靉靆垂布  如可承攬
日の光は覆い隠され、地上は清く涼しくなる。
雲はたなびき垂れ広がり、まるで手に取ることができるかのようだ。
 
其雨普等  四方倶下  流澍無量  率土充洽
その雨はあまねく平等に、四方へともに降りそそぎ、
流れ注ぐこと限りなく、天下のすべての土地を満たし潤す。
 
山川険谷  幽邃所生  卉木薬艸  大小諸樹
山や川、険しい谷、奥深く静かな場所に生える、
草や木、薬草、大小さまざまな樹木。
 
百穀苗稼  甘庶葡萄  雨之所潤  無不豊足
さまざまな穀物の苗や作物、サトウキビやブドウも、
雨が潤すところでは、豊かに実らないものはない。
 
乾地普洽  薬木並茂  其雲所出  一味之水
乾いた土地もあまねく潤い、薬となる木々も並んで茂る。
その雲から出るものは、すべて同じ味の水である。
 
草木叢林  随分受潤  一切諸樹  上中下等
草や木、茂みの林は、それぞれの分に応じて潤いを受け、
すべての樹木は、上・中・下の違いはあっても、
 
称其大小  各得生長  根茎枝葉  華果光色
それぞれの大小に応じて、おのおの成長する。
根も茎も枝も葉も、花も果実も、その光も色も、
 
一雨所及  皆得鮮沢  如其体相  性分大小
一つの雨が及ぶところでは、すべてがみずみずしく潤う。
その姿かたちに応じ、性質や分に大小があっても、
 
所潤是一  而各滋茂
潤すものはただ一つでありながら、それぞれが滋し茂っていく。

 
最後、主人公は幼いころの神秘的な記憶をたどりながら、もういちど自然界の深いところで、永遠に女性的なるものを思い、祈りを捧げているのでした。