学問のすすめ(14)福沢諭吉

 今日は、福沢諭吉の「学問のすすめ」その14を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は、悪のしくみについて論じていました。なんだか勉強になる内容に思いました。悪をなしてしまっても、当人は自分のことを愚かだと思っていないし「長年ずっと悪の計画を立てていた」というわけではない。実際の犯行を丁寧に調べてみると、悪意も無く事態に至ってしまっている場合も多い。自分の力量を見誤って危ない仕事を引きうけて、自分で勝手に追い詰められてしまうということも、知者が愚かしいことにいたってしまう原因になっている。見積もりが甘くて、予測とじっさいのちがい、というのが生まれて、悪にいたるきっかけになる。十年後の計画というのが、予想と実際のズレに至りやすい。今日の予定とか、明日することとか、そういう小さい目標の積み重ねのほうが良い。
 ここからは商売をちゃんとやるための心得が書かれてゆきます。商売で損をすることを予想して仕事をする人はほとんど居ないけれども、じっさいにやると損失しか出なかった商売は多く、収益についてちゃんとこまごまと計上することの重要性を書いていました。帳簿をちゃんとつけるしかない。この損益の帳簿をいつも再確認するということは、じつは人生においても重要だ、というように福沢諭吉は説くんです。1万円札の顔だった人なだけあるなあ、と思いました。
 時代遅れの学問をやり続けるのは問題だ、難読書に手を出して自分の人生を疎かにするようなことがあってはいけない、自分で自分の進む道を点検する、じぶんの帳簿をつける、というのが大切だ、と福沢諭吉は説くのでした。
 孔子の論語では「損得について考えるのは小人のすることで、君子は人道を重んじる」という教えなんですが、福沢諭吉の場合は、いろんなことを「持続的な商売人ならどうするだろうか」と考えるように薦めていて、商人の倫理を説いているのでした。
 それと権力のしくみのことも説いていて「世話」というのは「保護」と「指図」の両面があって、この両輪が両方とも機能している必要がある、というのでした。世話しているつもりで、保護できてないのは危険だし、世話しているつもりで指図がないなら悪事に至りやすい。「大きなお世話だよ」といって怒ってしまう時には、権力をもつ側に、指図だけがふくらんでいて保護が不足しているということを意味する。
 ギャンブル中毒者に、保護のための生活費をわたしても「賭博は禁止」という指図がなかったら、これは世話が成立していない。世話には「保護して指図する」という両面が必要だ、と書いていました。
 福沢は、市民全員が税金を払うことによって政府を保護している、だから市民は、政府に指図することが重要だ、と説くんです。
 さいきん気になっている、AI労働力とベーシックインカムの相性について、福沢諭吉門下の知識人ならどういう仕組みを提案するんだろうかと思いました。
 ベーシックインカムは「受給資格を審査し続ける、この果てしない労力の無駄遣い」というのを禁じて、小さい政府で、国民全ての安全性を一律に高める方針なんです。だからAI労働が本格化する現代には、相応しい政治方針のはずなんですが、日本政府や米国政府がこれを急に実現できるような気配はまったく無いというか、むしろよりいっそう、貧富の格差が激化しているように思えます。
 「世話における、保護と指図の両立」というのをいろんな場面で注視しておきなさい、と福沢は説くのでした。計算をして事態を俯瞰することが大事だとは言っても、困っている人がいたら思わず助けようとするというのが人間らしい感覚であって、それを忘れてはならない、と最後に記していました。あと3回で完結します。
 

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