温泉 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「温泉」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 梶井基次郎以外に、いろんな近代文学を読んでみたのですけれども、梶井基次郎の描写はほかと比べものにならないくらい、細部までじっくり書きあげていて、とても空想で書いたものに思えないんです。動画で撮ってもここまで環境や人工物や人の流れ、それからそれぞれの内情まで書けないわけで、梶井基次郎の描写はそれらを越えて詳細なんです。
 じつは行ったことがない架空の場所であってもおそらく梶井基次郎はここまで描けてしまうんだろうと思う箇所があるんです。「これはすばらしい銅板画のモテイイフである」と記している。風景の描写に混ぜるように空想も記している。おそらくこれは梶井が1年半ほど療養のために暮らした伊豆の「湯ヶ島」での実体験を元にした紀行文だとは思うんですけれども、あるいは銅版画を見てその風景の奥に聳える暗闇まで描けるのが、梶井基次郎だろうと思いました。
 車窓から旅先の田園風景を一瞬かいま見ても、その地を知ったことにはならないわけで、ちょうどその対極にいるのが梶井基次郎のように思いました。梶井は見知らぬ村の家々の暮らしまで描きだしているのがすごいなと思いました。
 崖を見て、その数十年前の豪雨やのちの水害について思いを馳せている。いまの風景を描写するだけでは無くって、数年前の風景まで見ていて、見えているものがぜんぜんちがうんだなあ……と思いました。耕作のために泥まみれになった馬が、農民に導かれ温泉の湯で洗われてきれいな姿になっている。川烏や懸巣の描写が美しい、すてきな随筆でした。
 

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