今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その48を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
もうすでに観光の気分は消え去っていて、今からどうやって東京から関西に帰るのか、これが幸子の意識の中心なんですが、どうも時間が空いてしまっているので上野の展覧会と動物園を、家族とみてきたところなのでした。お手伝いさんのお春どんも、観光して帰って来たんですが……話しを聞いていると、日光を観光して帰って来たのになぜか、お春どんが「富士山も見えましてございます」と言いだして、どういうこと? なのかという話しになるのでした。今はインターネットの時代なので「どこから富士山見える」とか検索すると、ほんとかどうか分かるんですが、当時は、噂の確認作業もむずかしかったんだなと、いうように思いました。
東京での悦子の診察も済ませて、翌日の夜に、幸子たちはついに東京から帰る算段がついたのでした。
雪子を誰とお見合いさせるのか、妙子の恋愛はどうなるのかと、悩みは続く状態ではあるんですが、なんだか平和な描写の章でした。これが戦後すぐに、みんなが読みたがった文学なんだというように思いました。
おおよそ百年前の医療は、今のように精密な検査は出来ないわけで、大ざっぱな診察結果を出すのがなんだか、面白く思いました。医者はこんなことを告げるのでした。
神経質の少年少女には得て天才肌な、学術の優秀な児が多い、だからこのお児さんなども導きように依っては或る一点で常人を凌ぐようにならないとも限らないので、さほど心配なさるには及ぶまい、要はこのお児さんの才能がどの方面に秀でているかを見出して上げて、一つの事に精神を集注するように仕向けることであると、そう云われた、そして専ら食餌療法に依るようにと云うことで、処方も書いてくれた
精密機械を使わない医者というのが、なんだかかえって信用できるようにも思う記載でした。夜汽車に乗って、雪子といったん別れていった幸子なのでした。「目まぐるしい二日間だった」と幸子は思うのでした。今回の章は、細雪の中盤の要点がいくつも記された箇所でしたので、全文を読まない場合は、この章だけを読むのもお勧めかと思います。
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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。『中巻三十五』は通し番号で『六十四』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)