細雪(58)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その58を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 谷崎作品では、四女の妙子や、姉の幸子のように、派手好きで積極的な女性が描かれることが多いと思います。ところが今回の細雪でかなり中心的なところにいる、結婚相手を探しつづけている雪子は、谷崎文学にしては珍しく、もの静かな人物なんです。
「口数の少い、いるのかいないのか分らないようにひっそりしている雪子」という谷崎の記載が印象に残りました。
 ドイツ人のシュトルツ一家が去ったあと、蒔岡一家のすぐそばにあるこの洋館には、べつのアジア系の外国人が住みはじめたようです。まだ交流らしい交流は生じていません。
 事件がひとつも起きない物語のなかで、流産してしまった幸子は、生まれる前に亡くなってしまった赤ん坊の一周忌であることを思いだして涙するのでした。
「キリレンコの妹のカタリナ」は妙子のところで人形作りを学んでいたのですが、どうもルドルフという新しい恋人が出来たようで、妙子とは疎遠になっていました。カタリナはヨーロッパへの船旅をはじめました。日本国内での国際交流のことがいろいろ書かれているのが、他の谷崎作品と比較して新鮮な印象を残しているように思います。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。『中巻三十五』は通し番号で『六十四』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)