細雪(63)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その63を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 妙子の婚約者である板倉なんですが、板倉の手術が失敗してしまったようで「看護婦などは、この手術は院長先生の失敗です、ほんとうにお気の毒ですと云っている」……板倉は足が「痛い痛い」と云い続け、どうも「手術の時に何か悪性の黴菌ばいきんが這入って、その毒が脚の方へまわったものであるらしかった」という状態になっています。いろんな医者がやって来て、みんなどうにもできないということが分かってきてしまう。このページだけを読むと板倉は亡くなってしまう可能性がありそうで、緊急の手術がどうしても必要らしい。「母親は、どうせ助からないものならそんなむごたらしいことをしないで、満足な体で死なしてやりたい」と述べているところなのでした。
 原因としては、本文にはこう書いています。「櫛田医師の説では、耳の手術から黴菌が這入って四肢を侵すと云うようなことは、たとい一流の専門医が注意に注意して手がけても往々あり得る」
 ふたたび危険な手術をするのか、それとも痛みに耐えて自然治癒を重んじるのか、ということで親族でも意見が分かれてしまって、患者は苦しみ続けている、という状態が記されていました。事件らしい事件が起きない小説である細雪の中では、今回は急場が畳みかけられる展開になっていました。
 けっきょくは再び手術をして、足を切断するという結論に至り、安静にさせる注射を打って、病人はほかの病院へ運ばれていったのでした。
 次回で、細雪の上巻と中巻が完結し、物語は下巻へと展開してゆきます。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。『中巻三十五』は通し番号で『六十四』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)