今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その65を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
今回は下巻のいちばんはじめの書きだしの章ですので『細雪』の上巻と中巻の振り返りのような事態が描かれています。雪子の縁談の相手として、新たに「沢崎」という名古屋の富豪の当主が現れます。この沢崎のあるじと結婚できるかどうか、幸子のほうで調べてもらっていたのですが、どうも沢崎というのは家柄がたいそう立派で、経歴だけを見ると、雪子の婚約者としては申し分のない裕福な資産家だし、二度目の婚姻を求める理由もはっきりしていて適正なもので、さらに蒔岡家の資産上の衰退や、伝統的な家柄というのもしっかり知っている上で、沢崎の当主は雪子を娶りたいというように考えていると判明します。
これを断ったらもう、雪子は婚期を逃してしまうというように思えるわけで、幸子のほうはこれは縁談を進めるべきだというように考えます。四姉妹の末っ子である妙子の婚約者だった板倉との恋愛が不幸にも終わってしまったということも、世間では噂となっていて、姉の雪子の縁談に多少、負の側面を与えているようです。
幸子と雪子は話しあって、現代で言うなら数十億円以上の資産を有する名古屋の大富豪との、縁談の話しを進めようということに決めるのでした。雪子の返答は「ふん」とか「はあ」とか、うなずきくらいしかしないでなにも話さないのですが、表情や声色からすると、結婚の可能性があるのなら、お見合いをしてみるという思いでいるようです。
細雪の全文を読まないけれども、本文をのぞき見したい人にとっては、この『細雪』のいちばんはじめの書きだしの、注射器を手にした姉妹たちの妖しい雰囲気の箇所と、こんかいの下巻の書きだし部分、この2つを10分ほどで読んでみると、細雪全体の雰囲気を掴みやすいのでは、と思いました。
装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
追記 今までの話しの流れからすると、明らかにこの大富豪と雪子との婚姻は、破談に終わるはずなのです……。本文には「望み薄な、アヤフヤな」「夢のような」縁談であって「ちょっと会わせるだけなのだろうから、気軽に、遊びに行くつもりで連れ出して貰えないか知らん、と云うのであった」……と書かれていました。