今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その69を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
二十年前に見たことのある「書院窓の附いた古風な十二畳の座敷」で、富豪の沢崎とのお見合いが始まりました。今回のお見合いも、婚約や結納までは至らない可能性が高く、相手方の親戚の都合によってこの、進展する可能性が無いお見合いが用意されてしまったのでした。
谷崎潤一郎は戦争がもっとも激しかった時期に、この古風な婚姻の長編小説を書きはじめ、途中で軍部から「時節にそぐわない」という理由で発禁処分を受けつつも、源氏物語の恋愛物語を現代語訳した経験を参考にしつつ、古い世界の中にある姉妹たちが、どのように新しい自由を獲得してゆくのかを、ゆっくりと描きだすという小説を書き継いでゆき、この章が書かれている頃はやっと戦争が終わって、戦時体制による混乱や貧困はまだ解消しては居ないのですが、平和と自由が見えてきた時代に、この物語の続きを書いているところなのでした。
お見合いでの交流がなんともぎこちない、という描写が続きました。この物語の主役であるはずの雪子は、ほとんどなにも話さず「はあ」としか言う機会がない、というのが、なんとも妙な一場面でした。相手の沢崎もこれはもう、お見合いは終わったと思っている。姉の幸子はいろいろ気を配って、話題を振ったりしたのでした。次回に続きます。
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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
追記 数日間ほど旅行していて、更新がややとどこおっていました。