今日は、夏目漱石の「虞美人草」その8を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
「クレオパトラ」のごとき美をたずさえる甲野藤尾と、哲学的な甲野君について幾度も記されてきた本作なんですが、今回は甲野の母が登場しました。
家の財産はいらないと述べているのに、甲野君はなぜか働く用意をしていない。……ということは家の財産を分けてもらうしかない。言っていることとやっていることがどうも一致しない。漱石がさまざまな文学で描いてきた高等遊民の問題が、今回ははっきりと言語化されていました。
また、藤尾の結婚問題については、本文にこう書かれています。「藤尾は返事を控えた。恋はすべての罪悪を孕む。返事を控えたうちには、あらゆるものを犠牲に供するの決心がある。」
漱石の「こころ」での三角関係があったのですが、それとは異なる三者を「虞美人草」で描いているということが、今回の全体像のようです。
自分の読解としては、相思相愛に到らないなと悟った「小野さん」をからかいはじめたのが藤尾なのではと思っていたのですが、どうもこれは予想を誤ったようです。
宗近一と甲野藤尾が結婚するかもしれないという予測が親族の中ではあったようですが、これはどうも藤尾の拒否によって終わっていた話だったようです。
金時計は甲野家の財産のひとつなんですが、これを藤尾は気に入っているのです。この金時計が藤尾とともにどこへゆくのか、というのがこの小説の序盤でも描かれた問題なのでした。
「あの時計は小野さんに上げても好いでしょうね」
と藤尾が言うのは冗談ではなくて、どうもそのように生きたいということだったのか、と思いました。
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「虞美人草」の一から十九まで、全文を読む。(原稿用紙換算584枚)
夏目漱石『夢十夜』を全文読む。 『草枕』を読む。


