機械 横光利一

 今日は、横光利一の「機械」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは百年前にしては最新の機械がそろった工場で起きた、不審な事件についての物語なんです。軽部という男と「私」は、仕事場で仕事中に際限なく争いをつづけていて暴力的で、危険な状態なんです。「私」は「屋敷」という優秀な男の仕事場での不審な行動に、違和感を抱く。
 産業スパイとして仕事を不当に盗みに来たのではないかという疑いを三人で抱きあっている。科学者や工学者や労働者とは思えない、無駄な殴りあいの暴力が突発的に生じ続けるのが、ワケが分からない映画でもみている気分になりました。
 賢いはずの三人の労働者が、意味不明に殴りあいをする、という奇妙な話しなんですが、途中で「真鍮を腐蝕させるときの塩化鉄の塩素はそれが多量に続いて出れば出るほど神経を疲労させるばかりではなく人間の理性をさえ混乱させてしまうのだ。」という記載があって、労働中にシンナー中毒みたいな中毒症状が出て、アル中のように暴力的になることはあり得るのでは……と思いました。
   

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
 
追記 ここからは完全にネタバレなんですが、三人で酒を飲んだあとに「屋敷が重クロム酸アンモニアの残った溶液を水と間違えて土瓶の口から飲んで死んで」しまったんです。軽部が屋敷を殺した可能性がある。酒にさんざん酔っていたので「私」が「屋敷」を殺した可能性もある。「私の頭もいつの間にか主人の頭のように早や塩化鉄に侵されてしまっているのではなかろうか」というのが恐ろしいです。麻薬か睡眠薬を不当に飲まされて、過失致死事件を引きおこしてしまった場合、いったい誰が本当の犯人なのか分からなくなってしまうのでは、と思いました。