神道の新しい方向 折口信夫

 今日は、折口信夫の「神道の新しい方向」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦中と戦後に、学者の折口信夫がいったいどう考えていたのかが、少し見えてくる随筆でした。戦時中の宗教心はいったいどういうものだったかを、米国と比較しながら検討していました。ふつう戦争というと経済力の差で決まるはずだと思うんですが、折口氏は宗教の視点から、国の強さを読み解いています。これは現代ならまったく気が付かない視点なのではと、思いました。今回、折口氏が述べている「社会的の礼譲」というのはたぶん、中国の孔子の言う「礼」に近い意味のことかと、思われます。日本の神道、というのがあまり言語化されてこなかったと思うんですが、この謎の宗教性について、折口信夫が記していました。
 序盤の「静かな反省が起つて来ました」という言葉が印象に残りました。敗戦のことは何年か前から分かっていた人の記録もあるんですが、折口信夫はどう考えていたのだろうか、と思いました。
 古代ギリシャ宗教が千年以上ずっと重要視されてこなかったように、日本における「神社教」は千年以上は下火の状態が続いていた。折口信夫はこう記します。「日本人は、信仰的に関係の深い神を、すぐさま祖先といふ風に考へ勝ちであります。その考へのために、祖先でない神を祖先とした例が、過去には沢山にあるのです。」「われわれはまづ、産霊神を祖先として感ずることを止めなければなりません。宗教の神を、われわれ人間の祖先であるといふ風に考へるのは、神道教を誤謬に導くものです。それからして、宗教と関係の薄い特殊な倫理観をすら導き込むやうになつたのです。」
  折口信夫は、日本の宗教を本来の状態に戻すには、こう考えるべきだと述べます。
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 大きな神々をば、われわれの人間系図の中から引き離して、系図以外に独立した宗教上の神として考へるのが、至当だと思ひます。さうして其神によつて、われわれの心身がかく発育して来た。われわれの神話の上では、われわれの住んでゐる此土地も、われわれの眺める山川草木も、総て此神が、それぞれ、適当な霊魂を附与したのが発育して来て、国土として生き、草木として生き、山川として成長して来た。人間・動物・地理・地物皆、生命を完了してゐるのだといふことをば、まう一度、新しい立場から信じ直さなければならないと思ひます。quomark end - 神道の新しい方向 折口信夫
 
 このあたりは「昭和天皇の人間宣言」にも関連性のあることに思いました。「折口信夫全集 第二〇巻」に収録されている随筆です。
  

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