細雪(22) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その22を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 関西から関東に引っ越す、姉の鶴子が、ついに準備を終えて、挨拶回りもすませて、幸子の家に数日ほど泊まりに来た。幸子と鶴子は結婚してからは、あまり語らいあう時間が無かったので、今回のことは幸子にとって嬉しかった。ところが姉の鶴子はたんに、のんびり寝ころがって休んでいるだけで、三日も経ってしまった。家族水入らずだと、かえってなにも起きないもので、なにも語らなかったりする。谷崎潤一郎はほんとに、人間っぽい人間を書くのが上手いなあと、思いながら読みました。鶴子はそのまま東京に行ってしまった。それから本文こうです。
quomark03 - 細雪(22) 谷崎潤一郎
  亡くなった父の妹に当る人で「富永の叔母ちゃん」と呼ばれている老女が、ある日ひょっこり訪ねて来た。quomark end - 細雪(22) 谷崎潤一郎
 
 これは、姉の鶴子も計画していたことですが、雪子と妙子はこれからどう生きるのかを、話しに来たというのでした。本家である鶴子の家の引越を機に、雪子と妙子の二人も東京で暮らしたらどうか、仕事のほうも東京のほうが有利なはずだということなのでした。
 えっ? だとすると小説は幸子と雪子のどっちの家を追うんだろうか、と思いました。
 年齢や仕事から考えてみると、上京するのはいかにもありえそうな話なんですが、恋人や仕事場や生活圏をそんなに簡単に変えられるわけでもないだろうし、どうなるんだろうと思いました。
 雪子は自由なのか、そうではないのか、読んでいてちょっと判別できないんです。
 姉である幸子の考えは納得がゆくもので、妹の雪子を召し使いみたいに使ってしまっていて時間を奪っているのではないかという危惧をしていて、雪子は幸子の家から出ていったほうが幸福になるのではというように考えているわけです。これは幸子が良く考えたことに思えます。雪子は東京の本家にお世話になって、新しい家族を探しはじめるということになるのでした。これで十数人の鶴子の一家は東京へ旅立ちます。本文こうです。
quomark03 - 細雪(22) 谷崎潤一郎
  百人近くも集った見送り人の中には先代の恩顧を受けた芸人、新町や北の新地の女将や老妓ろうぎも交っていたりして、さすがに昔日の威勢はなくとも、ふるい家柄を誇る一家が故郷の土地を引き払うだけのものはあった。quomark end - 細雪(22) 谷崎潤一郎
 
 こんな百年前の日本を描いた、映画のシーンがあったら忘れがたいだろうなあと思いました。戦争で人を殺したくないということで、若者がふるさとを離れて、言葉の通じない国を訪れるようなことが現代に起きているわけですが、この小説が書かれた前後には日本でもおおくの苦が生じていて、そこで谷崎がこういう静謐な描写の文学を記し続けているというのは、凄いと思いました。四番目の妹である妙子は、ギリギリのところで、一家の引越の挨拶にすべりこんで、ちょっとだけ会釈をして帰るんですが、そこに八年前に親交のあった関原という男が現れます。この二人の軽妙な対話がすてきでした……。
  

0000 - 細雪(22) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)