ゲーテ詩集(51)

 今日は「ゲーテ詩集」その51を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 ゲーテは仕事をすることがそのまま、神話的な世界を作ることで、そのゲーテが、仕事と希望のことを詩に記していました。こんなに魅力的な生きかたをした人もめったに居ないのでは、とか思いました。なんだかすごい詩でした……。
  

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頃日雑記 北條民雄

 今日は、北條民雄の「頃日雑記」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 らい病患者であり文学者だった北条民雄の、数頁のほどの雑記です。おもにフローベールの書簡集を手に入れて、これを愛読していた日々のことと、孤独について記しています。
 らい病の仲間とともに生きていて、らい病に関する北条民雄氏の考察がありました。らい病の当事者たちの「屈辱感を除去する」ために活動をするのが第一であると、いう記載もありました。ある患者が、人類全体が生きるためには、自分たちは犠牲になったほうがよいのかもしれないという仮説を述べるんです、それに対してこう答えているんです。「癩者だつて人間なんだらう、つまり人間を犠牲にして人間が発達するといふことが正しいかどうか、判らんね。片方が発展するために片方が死なねばならんなんていふんだつたら、僕はそんな発展には参加しないね。」この発言が印象に残りました。
 日記のように雑多なことも記していて、海外文学について、ちょっと奇妙な指摘がありました。フローベールとドストエフスキーはほぼ同じころに生まれて、同じ時期にあまたの文学を記したことを書いています。二人とも1821年に生まれているんです。フローベールの後期の文学性に共感をしている記載があります。北條民雄は彼の作品を読みながら、彼に黙祷を捧げているのでした。
quomark03 - 頃日雑記 北條民雄
 フロオベルの書簡集を読むのが、このごろの私の第一の楽しみだ。友人たちから離れてもう大分になるが、この書簡集が一冊あれば私はさほどに孤独を感じなくて済むやうになつた。孤独な者にとつて、その孤独から逃れる道は、孤独な者を考へるより他にないのかも知れない。quomark end - 頃日雑記 北條民雄
 

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弱者の糧 太宰治

 今日は、太宰治の「弱者の糧」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは数頁の随筆で、日本映画のことを書いています。近代の私小説にも関連した、生活と情感を描きだした映画の、好きなところを記しています。太宰治の文芸論としても読めるところがあるように思いました。
 

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追記  太宰治は異分野の創作者にたいして、ちょっとした敬意を持つように、勧めているのでした。それから太宰治は、日本の近代映画のことを、芸術というよりも「おしるこ」のようなものなんだと書きます。本文こうです。「けれども人は、芸術よりも、おしるこに感謝したい時がある。」
 

ガリバー旅行記(1) ジョナサン・スイフト

 今日は、ジョナサン・スイフトの「ガリバー旅行記」その1を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは戦後すぐに原民喜が翻訳した児童文学です。こんかいから4回に分けて読み通してみたいと思います。小中学生が対象の文学作品だと思うんですが、読んでみると隠喩と寓意がみごとで、大人も読める作品に思いました。近代小説は地味な展開が多いと思うんですが、この冒険小説はダイナミックな展開で、おおよその展開を知っていても飽きずに楽しめる名作に思いました。6センチほどの小人たちがワーッと集まって、大量の弓矢を打ちこんできたり、縄やクサリを大量に持ってきて「私」を縛り上げて動けなくしたり、皇帝や番兵や女官や学者や木こりたちやいろんな職業の小人たちが四方からやってきて、くちぐちに喋ります。原民喜のみごとに詩的な言葉もあいまって、すごいファンタジー小説になっていました。牧歌的な場面も、可愛らしい展開もあって、読んでいて癒されます。
quomark03 - ガリバー旅行記(1) ジョナサン・スイフト
 私の性質がおとなしいということが、みんなに知れわたり、皇帝も宮廷も軍隊も国民も、みんなが、私を信用してくれるようになりました。で、私は近いうちに自由の身にしてもらえるのだろう、と思うようになりました。私はできるだけ、みんなから良く思われるように努めました。quomark end - ガリバー旅行記(1) ジョナサン・スイフト
 
 リリパット国の皇帝は、人々にいろんな曲芸をさせるんですけれども、少なくない人が怪我をしたりしている。ほんの6センチしかない皇帝で、隣国とさえ上手くいっていないのに、かれが地球上のすべてを支配しているということを宣誓していたり、皇帝が思いつきでつくった珍妙な法律によって人々が困り果ててしまった歴史があったりと、王様に対するユーモラスな風刺が散りばめられて、いるのでした。
   

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★ガリバー旅行記の第1部から第4部まで全文通読する

 皇帝の戦争に協力したガリバーが、皇帝を批判する場面があります。本文こうです。
quomark03 - ガリバー旅行記(1) ジョナサン・スイフト
 自分は全世界のただ一人の王様になろう、というお考えだったのです。しかし、私は、
「どうもそれは正しいことではありません。それにきっと失敗します。」
 と、いろいろ説いて、皇帝をいさめました。そして、私は、
「自由で勇敢な国民を奴隷にしてしまうようなやり方なら、私はお手伝いできません。」
 と、はっきりお断りしました。quomark end - ガリバー旅行記(1) ジョナサン・スイフト
  
 他にもいろんなことが書いてありました。「詐欺が一番いけないのだ、と、リリパットの人たちは考えています」と記していてダンテ『神曲 地獄篇』でも詐欺の罪の重さを書いていたなあと思いました。読みすすめていると、小人や皇帝だけが変なのではなくって、ただの人間であるはずの主人公「私」もずいぶんバカげた考えで行動するんです。そこもまた、この童話の妙な魅力のように思いました。登場人物が全員ボケ役で、ツッコミ役というのがあんまり居ないんです。ここからもう明らかにネタバレなんですが、巨人がずっと暮らすには大量の食料が必要なわけで、けっきょく「私」はリリパット国から立ち去るしかないことになります。6センチメートルの小人たちが死刑、死刑と何度も述べていておそろしいのか、可愛らしいのか、どっちなのか分からない展開があって、ふつうに面白いところが、この童話の独特で歴史的な文学性に思いました。小人の世界から脱出するのに、大計画を立てて、壊れかけのボートを補修して、あまたの小人たちの協力もあって、新しい世界へと脱出してゆくのがみごとでした。この小説は4部構成なんですが、第1部だけでじゅうぶん完結しているのも上手いと思いました。また10日後にでも第2部を読みたいと思います。戦争が終わってすぐ、原民喜は子どもたちにこういう物語を届けたかったのかと思うと、感慨ぶかい作品に思いました。

原爆回想 原民喜

 今日は、原民喜の「原爆回想」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは原爆の直撃を受けて、辛くも生き残った原民喜の随筆です。まだ平和に暮らしていたころの父や妻のやっていたことを、生き生きと描くところに、家族への思いがにじむように思いました。当日の被爆地でなにをどう調理して食べることが出来たのかを記していて、当時の営みが描かれていました。本文こうです。
quomark03 - 原爆回想 原民喜
  私たちはその日の夕刻頃には、みんなもう精魂つきて、へとへとになっていた。私はオートミイルの缶をあけて、それを妹に焚かせて、みんなに一杯ずつ配らせた。すると次兄は、「ああ、こんなにおいしいものが世の中にあるのか」と長嘆息した。このミルクと砂糖の混っているオートミイルの缶は、用意のいい亡妻がずっと以前に買って非常用にとっておいた秘蔵の品である。この宝が衰えきった六人の人間を一とき慰めてくれたのである。quomark end - 原爆回想 原民喜
 

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「廃墟から」を全文読む。
 
広島市立図書館の運営する『WEB広島文学資料館 原民喜の世界』はこちら

放心教授 森於菟

 今日は、森於菟の「放心教授」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この「放心教授」では風刺絵のように、偉い教授をなんだか無意味にこき下ろす小説なのかと思って読んでいたら、そうではなくて自分で自分をこき下ろすという奇妙な語りの、作品でした。世間にうとくて、つねに放心しっぱなしの教授が、ドイツで学問をしたり観光をしたりした、というのが描かれます。昔はいまと違って、ヨーロッパでは歩いているだけでなんだか蔑視されたり冷笑されてしまう、という体験を記したり、道中でやっていたオシャレとかについていろいろ書いていました。
 東京の電車のなかで見知らぬ娘たちに笑われた、その理由は、服を裏表に着てしまっていた……。これは落語の笑いを小説にしたような作品かと思ったんですが、どうも実話として書かれたようです。ちょっと漱石の『坊っちゃん』に似ている、奇妙に魅惑的な随筆でした。
 

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