ゲーテ詩集(37)

 今日は「ゲーテ詩集」その37を配信します。縦書き表示で読めますよ。
quomark03 - ゲーテ詩集(37)
 誰が我々の心を知らう?
 ああ、それを知つてくれる人があつたなら
 誰かの心に同感が充ち溢れたなら
 自然のすべての苦痛と喜びとを
 親しく二重に感じられたらquomark end - ゲーテ詩集(37)
 
 ところが、このようなことはほとんど起きないと、ゲーテは告げるんです。ゲーテは美しいことを記し、そのすぐあとに、現実の厳しさを指摘するんです。政治家の仕事もして、神話的な詩人であったゲーテの、重層的なまなざしが印象に残る作品でした。
 

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階段 海野十三

 今日は、海野十三の「階段」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは近代の探偵小説で、犯人を科学的に調査して、理詰めで探してゆくというお話しでした。これはなんだかネタバレなんですが……この本は探偵小説ですけど、とくにトリックは存在しないんです。足音の録音によって、足音の特徴を見分けて、犯人をみごと特定できた、というところが印象的でした。指紋を検出して犯人を見分けるように、足音を記録して犯人を見つけてしまった。これが書かれた50数年後には監視カメラや通信履歴で犯人を探すわけで、音の記録で犯人を探す、というのが先進的でした。音だけでも、いろんなことが見えてくる、というのが不思議な感じでした。

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暴風雨の中 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「暴風雨の中」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  嵐のなか、大水に流されそうになっている家に三之助が寝ころんでいる。どうして逃げないのか、よく分からない。逃げるのに飽きてしまったようである。その嵐の中を、舟に乗った謎の男が現れるんですが、これがなんだか盗賊みたいな雰囲気なんですが、しばらくすると、十手を出して、三之助を逮捕する、警察官の仕事をするんです。当時は岡っ引きと言われていたんですけど、この物語上では、盗賊なのか警官なのか分からない奴だなと思ったら、wikipediaの「岡っ引き」の頁には、こう書いていました。
quomark03 - 暴風雨の中 山本周五郎
 地域の顔役が岡っ引になることが多く、両立しえない仕事を兼ねる「二足のわらじ」の語源となった。奉行所の威光を笠に着て威張る者や、恐喝まがいの行為で金を強請る者も多く、たびたび岡っ引の使用を禁止する御触れが出た。quomark end - 暴風雨の中 山本周五郎
 
 毒を以て毒を制す、とか、ミイラ取りがミイラになる、ということを連想させる世界が、江戸時代の警察組織にはあったようです。現代で言うならスパイならこういう問題が起きそうです。「おめえの気の毒な身の上はたいがいわかってる」と男は言うんです。そこから、三之助の貧しい幼少時代が記されてゆきます。母親も貧しかった。本文こうです。
quomark03 - 暴風雨の中 山本周五郎
  おいちさんは泥棒をした。
 狭い島のなかで、うわさはすぐにひろまった。子供たちは泥棒の子と呼ばれた。quomark end - 暴風雨の中 山本周五郎
  
 ここから、三之助の犯罪が記されてゆきます。ちょっとドストエフスキーの、ラスコーリニコフとソーニャみたいな物語でした。
  

0000 - 暴風雨の中 山本周五郎

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細雪(16) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その16を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は、四女の妙子のはなしで、人形創作の個展を行って、ちゃんと商売になってきた、というところが描写されます。それから1941年のレストランと、日本在住の外国人のことが語られます。
 政府・軍人が対立していても……商売人は対立していないんだなあというのが分かる、戦中の平和な描写がありました。
 妙子とちょっと関係があるカタリナという女性が登場して、ロシア人とイギリス人のハーフの幼い女の子も登場し、スケート遊びや、家庭料理やトランプやハイキングのことが語られます。
  

0000 - 細雪(16) 谷崎潤一郎

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

川 新美南吉

 今日は、新美南吉の「川」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、前半部分は牧歌的な、川で遊ぶ四人の明るい子どもたちを描いた、子ども向けの童話なんですけど、中盤から急に深刻な内容に転調する、新美南吉しか記さない童話に思いました。最後まで読むと、唸るような、すごい文学作品でした。ぼくは新美南吉をちゃんと読む機会は無かったんですが、この作品はすごいと思いました。ちょっと他にない児童文学でした。
 

0000 - 川 新美南吉

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恐ろしい東京 夢野久作

 今日は、夢野久作の「恐ろしい東京」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  これは夢野久作にしては珍しく、実話っぽい、ごくふつうの随筆でした。近代小説の魅力の1つに、誰一人たどりつけない百年前の都市である東京を、文章で観察できて、ちょっと絵本の中の世界のような幻視的な都市空間を垣間見られる、というのがあると思いました。たんに未踏の地へのノスタルジアなんですけど。現代の廃墟とはまるで異なる魅力を感じる、森に包まれた東京が描写されるのでした。夢野久作は東京のど真ん中の銀座を描きだしています。
 

0000 - 恐ろしい東京 夢野久作

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追記   中盤から終盤にかけて、田舎に帰る「筆者」の心境と状況が語られるのですが、その中で奇妙な挿話がある。不幸話をして「畳の上に両手を突いて男泣きに泣く」人間が現れて、やむなく「先生」は一筆書いてその男に渡すのを「筆者」は目撃します。後日になって「某クラブの連中」にこの話をすると、それは詐欺師が嘘を言っているのだと指摘されて笑われる。
 じっさいには、笑った連中が嘘つきなのか、泣いている男が嘘つきなのかは、ちょっとどちらに判定するか迷うところなんです……。夢野久作は、あざ笑った連中との縁を切る決意を描写するのでした。ぼくはたぶん、実話っぽい話だと思って読んだんですが、謎の短編でした。本文とちっとも関係が無いんですが、京都には縁切り神社というのがあるんです。何回か立ち寄ったことがあります。