撞球室の七人 橋本五郎

 今日は、橋本五郎の「撞球室の七人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ビリヤード中に奇妙な事件が起きる。多くの客が近くで見ていたのにもかかわらず、いったいどういう事件だったのかが、わからない。凶器もおおよそは判定できているのに、いったいだれが犯人なのかが分からない。読んでいて、事件なのではなく事故なのかもしれない……と予想しつつ、この事件の被害者の動きを自分なりに検証してみて読みすすめたんですが、どうもやはり犯人がいるようで、ここからは完全にネタバレなので、未読の方は読み飛ばしてください。
 曲芸師の男が、どうもナイフ投げの技で犯行を行ったようである。ところが、凶器が見つからない。そこで気がついたのに、現場にいた「ゲーム取り」の少女が、なにかを真剣に思いつめていて、みなが事件に目を奪われている時に一人だけ不思議な動きをしていたことに、「私」は気がついた……。だが「私」は彼女を見逃したのでした。「子供らしいおびえた様で警官の様子ばかりを眺めていた」彼女の未来のことを思うと、真相は暴かずにおく、という判断をした様子でした……。

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晶子詩篇全集拾遺(60)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(60)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 与謝野晶子が草木と人体について詩で論考をしているのがおもしろかったです。植物的構成というのはさまざまな場所にあるはずで、それはある部分を切り取っても崩れ落ちない。枝葉を切り取っても問題が起きない。記憶もじつはこういう構成になっていると思うんです。ある時間の記憶を失ったからといって、彼の思想や心情がガラガラッと崩れ落ちたりはしない。植物の根っこと同じで、一本の根が外れても木は木のままで活動をする。
 

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あそび 森鴎外

 今日は、森鴎外の「あそび」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは官吏の日常を描いた、小説なんです。軍人でありながら、仕事とはべつに芸術をつくっていった森鴎外の、独特な眼差しがあるように思いました。木村という主人公も、公務員でありながら文学芸術をやっている。作中で、ヘルマンバールルーズベルトのことをちょっと論じていました。
 主人公の木村は「始終晴々としている」んです。おもしろいこともない場面で楽しんで暮らしている。べつに自他をあざむいているわけではない。なぜなのか。
 学校の暗記の勉強とかを楽しそうにやっている、煩雑な仕事をいつも笑いながらやっている人がじっさいに居ますけど、そういう人の心理状態が、森鴎外によって記されていて、なるほどと思うところがありました。
 

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老夫婦 黒島傳治

 今日は、黒島傳治の「老夫婦」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 黒島伝治の作品は、小説と言うよりも、ドキュメンタリーかなにかの実話を文章化したような構成で、リアルなんです。
 貧しい家の子供が、学問をやりたい、学資をもらいたいと頼んできている。両親は農業でけんめいに稼いでおり資金上は苦労が絶えないのですが、子供が学問に打ちこんでいることを嬉しく思っている。だがその清三が病に臥してしまった。そのあとなんとか卒業して東京の会社に就職することができ、結婚もした。老夫婦は田舎の仕事を畳んで、東京の息子のところで暮らすことにした。
 これまでの野良仕事を思いだして、狭いところで庭いじりをしたりする。これが本格的すぎて、肥を肥料にしたりする。庭がふんぷんと匂ってしまう。この老夫婦がなんだかおもしろい。冬が明けてやっと東京見物をする。ところが休日も息子は仕事関係の付き合いで忙しい。土埃の舞うような東京の都心の、猛烈な人だかりの中で、夫婦二人で物見遊山してもどうもぐったりするだけである。それでこの二人の考える、こういうほうが良い、自分の仕事ができる場が良い、というオチのところの思いが、ずいぶん腑に落ちました。
 

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野分(2) 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「野分」その(2)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 12回にわけて、漱石の野分を読んでいるところなんですけど、今回、若い物書きの高柳君とその友人の中野君が登場します。作中の人物解説はこうです。
quomark03 - 野分(2) 夏目漱石
 高柳君は口数をきかぬ、人交ひとまじわりをせぬ、厭世家えんせいかの皮肉屋と云われた男である。中野君は鷹揚おうような、円満な、趣味に富んだ秀才である。quomark end - 野分(2) 夏目漱石
 
 第1話に出てきた白井という文学者は、十数人がかりの子どもたちにいじめられて、学校を辞めさせられてしまった。どうもこれを先導した中学の先生がいるようである。このあたりは坊っちゃんでも描かれたユーモアのある展開も、あるんです。
 ホルマン・ハントの絵画を鑑賞しながら、空想小説を書いたら良い、と親友に語る……。作中で、小説を書く時の考え方を記しているんです。どういう小説を書きたいかというと「痛くっても、苦しくっても、僕の内面の消息にどこか、触れていればそれで満足するんだ」と、このあとの議論が興味深かったです。
 これが漱石の文学論と言えるのか、あるいは無名で間の抜けた若者の頼りない考えなのか、よくわからない。虚実のグラデーションが入り混じっていて、虚そのものでもない、実そのものでもない、曖昧な領域でものの考えが記されていて、そこに魅力を感じました。
 

0000 - 野分(2) 夏目漱石

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雨粒 石原純

 今日は、石原純の「雨粒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは科学の随筆なんですけれども、霧箱というものが登場します。この随筆のもう少しのちの一九五〇年ごろには泡箱というのが米国で発明されて、これでノーベル賞を得るような新発見があった、というのを知りました。
 

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