奎吉 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「奎吉」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 梶井基次郎といえば「檸檬」がおすすめなんです。今回の短編「奎吉」では、なんだか厳しい状況が描かれます。今回の主人公の奎吉は、学校の勉強をサボってしまって、金も環境もずいぶんとぼしくなってしまった。金が無いので、無心をしつづけてしまって、さらに貧しくなってしまう。アブク銭とか悪貨とかいう言葉がありますけど、奎吉の手にしているお金はどうもそういうものになってしまう。
 真面目に働いてその対価が安定して入ってくる、というのとちがう金の流れで、お金に右往左往してしまう……。人ごとでは無い話だなあーと思いました。
 お金のもらいかたがどうも誠実ではなくても、使いかたのほうを改善することは出来るのでは、と思いました。
 

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妻 横光利一

 今日は、横光利一の「妻」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 夫婦のなんだか朗らかな暮らしのなかで「私」は庭のカマキリの生態を観察していると、メスのカマキリが夫を食べてしまって、養分になってしまう。終盤の「私」の指摘を上品に読み説いた場合、どういった言いかえになるんだろうかと思いました。妻子を養えたら誰だって喜ぶ……。末尾のとくに意味を持たない、おだやかな会話の四行が、映画の結末でこれを目の当たりにしたら、なにか満足度が高いのではと思いました。
  

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玩具 太宰治

 今日は、宰治の「玩具」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治が近代文学の中でもっとも美しい文を書くんだと思っているんですけど、この一文が印象に残りました。
quomark03 - 玩具 太宰治
 私は糸の切れた紙凧かみだこのようにふわふわ生家へ吹きもどされる。quomark end - 玩具 太宰治
 
 糸の切れた紙凧はふつう、青空か平原に落ちてゆくもんだと思うんですが、そのような自然な場に生家があるようです……。この後段を読んでゆくと、このたとえに複数の意味あいが込められているのを感じて、こういう隠喩の技法はどうやって書けるんだろうと、思いました。いっけん平易な文の連なりに見えるんですが、よくみるとマグリットのデペイズマンのような方法を用いているところがあるように思います。これは未完の自伝的小説なのですが、終盤の描写に迫力がありました。
 

0000 - 玩具 太宰治

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 追記 
 作中の「手管」のあとに2回だけ書かれる「君」というのも妙なんです……。こんかい「ですます調」ではなく「だ・である調」で「る」で閉じる文章が多くて118回くらい「る」が使われているんですけど「だ」はほとんど使っていない。「ものの名前というものは、それがふさわしい名前であるなら、よし聞かずとも、ひとりでに判って来るものだ。」このあたりまで「だ」を使ってないんです。終盤「私が二つのときの冬」のあたりでも使っています。太宰治の独特な文体がみごとで、その美しさの理由がなんなのかくわしく論じている本があれば、ちょっと読んでみたいと思いました。
むつかしい言葉を調べてみました。
手管 
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%89%8B%E7%AE%A1/

科学者と夜店商人 海野十三

 今日は、海野十三の「科学者と夜店商人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ちょっと間の抜けた科学者の、奇妙な謎解きの物語でした。 
     

0000 - 科学者と夜店商人 海野十三

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追記  こんかい、海野十三が記している謎は、生きものを使ったトリックなんです。文明が進歩して自然界が遠のいた時代には、自然科学こそが重大な学問になってゆくと思うんですが、こんかい登場する科学者は、自然科学に疎いんです。それで科学者はだまされてしまいます。古典落語みたいな近代SFでした。

鎖工場 大杉栄

 今日は、大杉栄の「鎖工場」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 大杉栄というと無政府主義者の思想家だと思うんですけど、その大杉栄が純粋な短編小説を書いています。夢十夜かと思うような、謎めいた不条理小説を書いています。自由の逆側の事態について、異様な筆致で書いていて近代SF小説のような格好良さに魅了されました。本文こうです。
quomark03 - 鎖工場 大杉栄
 俺はへーゲルの言葉を思い出した。「現実するもののいっさいは道理あるものである。道理あるもののいっさいは現実するものである。」quomark end - 鎖工場 大杉栄
 

0000 - 鎖工場 大杉栄

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音について 太宰治

 今日は、太宰治の「音について」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「トカトントン」で有名な太宰治が、音について記している随筆です。なにかしらの印象が、音として現れる……。また雑音や生活音について記していて、最後の一行で奇妙なことを述べていました。ぼくが思ったのは、ダンテの神曲には生活の気配がまったくなかった、ということで、そうではないところの文学性について論じていました。
  

0000 - 音について 太宰治

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