秋は淋しい 素木しづ

 今日は、素木しづの「秋は淋しい」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 初夏の青々としたもみじの美しさはそうとうのものでお勧めだ、という話を聞いたことがあるのですが、今作では、秋に見る老いた桜の木のことを描いています。
 近代文学に描かれるさみしさというのは、ちょっと現代人はめったにまのあたりにできないものに思うんです。飽食の時代では無い……。身体に栄養がゆきわたっていない人々の生きている世界が淡淡と記されています。病のために身体も痩せ衰えてゆく。素木しづは朝子の体躯を「美しくない」と記すのですけれども、ぼくはこの朝子に関する描写はエゴン・シーレの絵画のように美しいものに思いました。
 

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尾生の信 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「尾生の信」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この短編は、おもしろい構成をしていて、そもそも題名が荘子の本に記された寓話のうちの一つなんだそうです。知らずに読んだら、オチの唐突さに驚いたんですが、荘子の本を読みたくなる物語でした。芥川龍之介は、古典への興味を読者に広げてゆくのが上手いと、思いました。原典に記された尾生ってどういう人物だろうとか、荘子が書いた寓話は他にどういうものがあるんだろうとか、興味が涌いたのでこんど図書館で読んでみようと思いました。
 

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知らない人 太宰治

 今日は、太宰治の「知らない人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 病床で偶然に読んだ、追悼記のいくつかについて太宰治が記しています。最後の一文が奇妙で、意味内容を知りたいと思ったのですが、この作中で語られている人物について調べてみると、1938年のバイアス湾上陸作戦に従軍している。1939年5月11日、日本史上でも有数の失策と言われるノモンハン事件が起きている。この先の六年間がもっとも小説家にとってつらい、特高と発禁と貧困と空爆の時代です。そういう時代に太宰治が小説を書いていました。この数十年ほど前に正岡子規も従軍したすぐあとに体調を崩して『病牀六尺』を記してゆくようになったのですが、どうも作中のK君も従軍後の病に苦しんだようなんです。この随筆のはじめに、新聞広告に載っている「高價の藥品」を試してみた太宰治なんですけれども、最新の薬が効くというのはどうもウソですねえということを太宰治が冗談のように描いている。そうして終盤に、K君のように優れた人間的な人物が死んだ理由を太宰治が知るんです。さいごに奇跡について太宰治は記しているのですけれども、なんだかものごとの必然について暗喩しているように思いました。
 

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容貌 太宰治

 今日は、太宰治の「容貌」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはほんの一頁だけの掌編で、自分の顔についてみょうに気になっている男にたいして、とつぜん話しかけてくる少女の話なのですが、太宰治の書きたかったのはこういう人間性だったのでは、と思いました。はっきりとものを言ってずいぶんおもしろいことをいう女の子でした……。
  

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撞球室の七人 橋本五郎

 今日は、橋本五郎の「撞球室の七人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ビリヤード中に奇妙な事件が起きる。多くの客が近くで見ていたのにもかかわらず、いったいどういう事件だったのかが、わからない。凶器もおおよそは判定できているのに、いったいだれが犯人なのかが分からない。読んでいて、事件なのではなく事故なのかもしれない……と予想しつつ、この事件の被害者の動きを自分なりに検証してみて読みすすめたんですが、どうもやはり犯人がいるようで、ここからは完全にネタバレなので、未読の方は読み飛ばしてください。
 曲芸師の男が、どうもナイフ投げの技で犯行を行ったようである。ところが、凶器が見つからない。そこで気がついたのに、現場にいた「ゲーム取り」の少女が、なにかを真剣に思いつめていて、みなが事件に目を奪われている時に一人だけ不思議な動きをしていたことに、「私」は気がついた……。だが「私」は彼女を見逃したのでした。「子供らしいおびえた様で警官の様子ばかりを眺めていた」彼女の未来のことを思うと、真相は暴かずにおく、という判断をした様子でした……。

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乗合自動車 川田功

 今日は、川田功の「乗合自動車」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは掏摸と刑事のはなしです。掏摸のものの考えがなんだか下品というか生々しく、その犯罪心理に興味を引かれました。ライバルの掏摸のことを思いだしつつ、刑事が見張っているところで悪事をなそうと夢中になる、罪のなすりつけをする……。どうもこう、最近思うことは、近代文学にはよく勧善懲悪か、その逆を行くユーモアというのが描かれています。文学においてはこれが重大な魅力になっていると思いました。
 

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