王さまと靴屋 新美南吉

 今日は、新美南吉の「王さまと靴屋」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは幼稚園生か小学校低学年のための童話なんです。帝王が勝手に裁判したり勝手に罰したりできないように、三権が分立して権力の暴走を食いとめて……というような正しい歴史の中のはなしとぜんぜんちがう、なんだか妙な王様と、靴屋のおじいさんの物語でした。
 

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追記  これの作者を隠して読んだら、星新一の作品なのか、アンデルセンの物語なのか、賢治の童話なのか、新美南吉の作品なのか、分からないように思いました。素性を隠す理由と方法のところで、四者にちがいが生じるようにも思います。
 

ほんとにそのとおり! アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「ほんとにそのとおり!」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは小学校低学年に読み聞かせするような童話だと思います。大人が読んでも、ほんとにそういうことは起きる! と思うような不思議な話でした。噂に尾ひれがつくどころではない、尾ひれから魚が生まれるくらいとんでもないことが……起きたりする物語でした。文体は児童用の童話そのものなんですが、現代の世界でも、今回アンデルセンが指摘していることがよく起きているように、思いました。
 

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三つのことば グリム

 今日は、グリムの「三つのことば」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは完全に児童向けの作品で、小学校低学年しか読者対象になっていないと思うんですが、読んでみたら不思議な魅力を感じました。文学の中心にはユーモアがあるのだ、という評論を読んだことがあるんですが、今回この本を読んでいて、この童話も文学の中心的な存在なんだろう……と、思いました。
 

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一坪館 海野十三

 今日は、海野十三の「一坪館」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦争が終わったあと、源一という少年が、銀座で一坪の土地をもらいうけた、というところから物語が始まる小説です。
 海野十三は、あらゆる建物が焼け跡になって無惨に壊れているなか、人びとがふつうに生きているところを描きだしています。近代にSF小説を多数書いた作家の、焼け跡と少年の描写が印象に残りました。本文こうです。
quomark03 - 一坪館 海野十三
  人影一つ見えない。みんなどこへ行ってしまったのだろうか。
「ほほう。ぼくが今ここに店を出したら、ぼくは戦災後せんさいご復興ふっこうの一番のりをするわけだ。よし今日中に店を出そう」
 銀座復興の店開きの第一番を、少年がひきうけるのはゆかいではないかと源一はいよいようれしくなった。quomark end - 一坪館 海野十三
 
 作中、花屋をやって花を売るのが良いだろうという案を出した老翁の描写がみごとでした。海野十三の敗戦日記と並べて読むと学ぶところがあるように思いました。実際に見たものと空想を混ぜて描写することの、力強さを感じる作品に思いました。
quomark03 - 一坪館 海野十三
  銀座も、バラック建ながらだいぶん復興ふっこうした。
 進駐軍しんちゅうぐんの将校や、兵士たちがいきいきした表情で、ぶつかりそうな人通りをわけて歩いていく。quomark end - 一坪館 海野十三
 

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川 新美南吉

 今日は、新美南吉の「川」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、前半部分は牧歌的な、川で遊ぶ四人の明るい子どもたちを描いた、子ども向けの童話なんですけど、中盤から急に深刻な内容に転調する、新美南吉しか記さない童話に思いました。最後まで読むと、唸るような、すごい文学作品でした。ぼくは新美南吉をちゃんと読む機会は無かったんですが、この作品はすごいと思いました。ちょっと他にない児童文学でした。
 

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ポラーノの広場 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「ポラーノの広場」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  この小説の主人公はレオーノ・キューストという男なのですが、ところどころ、宮沢賢治のそのまんまの性格が記されています。
quomark03 - ポラーノの広場 宮沢賢治
 俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。quomark end - ポラーノの広場 宮沢賢治
 
 というのは現実の賢治もまったくこの通りに生きていたように思います。
quomark03 - ポラーノの広場 宮沢賢治
  あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。quomark end - ポラーノの広場 宮沢賢治
 
 という記載は「春と修羅」の詩で出てきそうな雰囲気です。賢治は農学校の先生で、レオーノ・キューストは市役所の不思議な役人です。はじめ、どこかに行ってしまった山羊を探し歩いていてようやくこの迷子の山羊を見つけたあとすぐ「ポラーノの広場」という謎の場所について語られはじめます。行き方が謎で、そう簡単には見つからない場所にある広場なんです。それからみんなでこのポラーノの広場を探しにゆきます。
 ここからはネタバレなので未読の方は本文から先に読んだほうが良いと思うんですが……旅の途中で現れる、番号が一つ一つ記された花というのが、謎めいていて、すてきでした。
 美しい音色が聞こえてくると、ポラーノの広場はもうすぐなんです。この広場では楽隊もいて夏まつりをやっているんです。ゲーテの『ファウスト』に描かれた乱痴気騒ぎや、ハリウッド映画に出てくる拳闘シーンみたいなものもあって、どうも明るい場面もあります。それから夏の祭りに疲れて、レオーノ・キューストとファゼーロ少年は家に帰ります。
 そのあと奇妙な事件が起きるんです。ファゼーロがどこかに消えてしまったんです。これが……これはもう完全にネタバレなんですけど、いっけん失踪に見えて、出奔というか、じつはりっぱな出立だったという事態が後半で明らかになります。子どもにまで乱闘をしかけたデストゥパーゴは事業に失敗して信用を失うのでした。デストゥパーゴが保てなかったポラーノの広場を、自分たちではじめから作り直そうとする、終盤のこの文章の前後の記載が、とても印象に残りました。
 
「そうだ(略)そこへ夜行って歌えば、またそこで風を吸えば、もう元気がついてあしたの仕事中からだいっぱい勢がよくて面白いような、そういうポラーノの広場をぼくらはみんなでこさえよう。」
 
最後のほうで(原稿約一枚分空白)となっているのですが、いちぶ失われていても、みごとな完成度であるのに驚きました。
 

0000 - ポラーノの広場 宮沢賢治

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明けましておめでとうございます。今年も近代の詩や小説を中心に再読をしてみて、また新たに未読の本を見つけてゆきたいと思います。
 
追記
いま現在、更新を数日間ほど休止しています。明かりの本ではこれまで数回ほど「文学壁紙」を配信してきました。宮沢賢治「春と修羅」のPC&タブレット用の文学壁紙をちょっと作りました。ダウンロード無料です。ご自由に個人利用してください。
 
追記2 空き時間に「海野十三敗戦日記」の装画を作り直しました。