雪三題 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「雪三題」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦争中に戦争とまったく違うことをしていた人は多かったはずなんですが、今回の中谷宇吉郎は戦時中に、米国の気象学会会長が後援して出版されたベントレーの『雪の結晶』に刺戟されて始めた、中谷の仕事のことを書いています。1942年の戦争が激化して特高が言論統制を行っているころ自分の死期を感じつつ……「今までの十五年間の雪の研究をまとめて、二千枚の顕微鏡写真とともに、岩波書店へ渡しておいた」と書いていました。
 自然界の謎を解き明かしてゆく自然科学者の思いは世界共通のものであって、その研究のことを細かに記している随筆でした。中谷宇吉郎は、雪が生活をはばむことに関して、日本の北国の為政者が、その実情をよく見ていないことに疑義を呈しているのでした。
  作中で引用している、源実朝の歌というのは「奧山の岩垣沼に木の葉おちてしづめる心人しるらめや」という沼の底の木の葉について歌ったものでこれは万葉集第四巻の丹波大女娘子の和歌「鴨鳥の遊ぶこの池に木の葉落ちて浮きたる心我が思はなくに」という歌に感化されて作られた作品なんだと思います。鴨が遊んでいて、そこに落ち葉がぷっかりと浮くような、そういう浮ついた気持ちで思っているわけではありません、という歌なのでした。
  

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自分と詩との関係 高村光太郎

 今日は、高村光太郎の「自分と詩との関係」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 彫刻家で詩人の高村光太郎が、詩作する意味を記している随筆です。彫刻に物語性を持たせることを否定したく、本業の彫刻から、文学性を剥ぎ取ろうとして、詩を書いたというのがなんだか独特で驚く内容でした。硬いものを彫りつづけて、柔らかいものを表現する彫刻という仕事が、文と思索に多分な影響を与えているように思いました。自分の本業の芸術創作が「ほんとに物になるのは」晩期になってからだろうと、高村光太郎は記すのでした。

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学問のすすめ(7)福沢諭吉

 今日は、福沢諭吉の「学問のすすめ」その7を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回も福沢諭吉は国家論を述べるのですが、不思議なことを主張していました。誰もが一人で二役をこなしなさいと言うんです。
 経営者であるような認識と、世界に入りこんだ客であるような認識。
 福沢諭吉は、順法を旨としながら盛んな経営をするように勧めます。影で不正をしないような考え方を伝えるんです。会社の経営者でありながら客でもある、と考えた場合は、たしかに会社内で不正をしにくいように思います。客の視点で見るとこういうズルはできるけど、同時に社長の視点で見るとそのズルは経営を悪化させる、と分かるわけで、逆に汚いダンゴを売りさばいてたくさん儲けようとしたら客の視点で「それはまずい」となります。福沢諭吉が今回述べている「客と経営者の両方になりなさい」というのはすてきな考え方に思いました。
 政府の考えは自分の考えとまったく違うわけですが、とにかくいったん政府の命じる禁止事項に従う。そののちに政府に問題点を説明すべきだ、と記しています。
 貴賤上下の区別無く「ある程度の文化的な生活」をもたらして、生存権などの権利を国家は保障しないといけない、脱税や着服などの不公平もあってはならない。と、福沢諭吉は、大金が損失しかねない政府の行政上の失態や不正を許してはならないと説きます。
 今回も、政府を怖れて盲従してはいけない、集団的に抵抗せよ、というように説いていました。それから、ガンジーの述べる非暴力不服従とも通底した生きかたで、国の不正を改めさせるという考えについても記していました。
  

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★ 『学問のすすめ』第一編(初編)から第一七編まで全文を通読する

 

小岩井農場 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「小岩井農場」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 明けましておめでとうございます。今年も近代文学を読みすすめてみて、百年前の文学世界を巡ってみたいと思います。
 賢治は農村の美しさや、風景や、鳥のありさまを克明に描きます。空を見上げる「白い笠の農夫」が現れた中盤のあたりから、幻想的な世界が記されますが、そのあとは再び写実的な農村が克明に描かれるのでした。後半から、主人公である「わたくし」と汽車を待つ男の2人は、オオジシギ(ぶどしぎ)という鳥について少し語りあいます。
 
 終盤には「銀河鉄道の夜」をも越えるような幻想的な世界「der heilige Punkt」つまり「聖なる点」の聖いこころもちをひらく地点が描きだされるのでした。「春と修羅」の「序」に描かれる「因果交流電燈の/ひとつの青い照明」と「銀河鉄道の夜」を結節するむすびめとしての詩として「小岩井農場」を読めるのでは、と思いました。
 「トツパースの雨の高みから/けらを着た女の子がふたりくる/シベリヤ風に赤いきれをかぶり/まつすぐにいそいでやつてくる」この前後の詩が美しい描写でした。
 

0000 - 小岩井農場 宮沢賢治

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★  春と修羅の全文はこちら 
 

 
  
追記   能登半島の震災で被害に逢われた方々に、謹んでお見舞い申し上げます。Yahoo!ネット募金にて、少額の寄付をしました……。
 

雪の化石1 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「雪の化石1」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 科学の知識で、雪の結晶を化石にすることはできるかどうか、このことについて考えた、ごく短い随筆でした。具体的には、このような方法を記していました。
quomark03 - 雪の化石1 中谷宇吉郎
  零度以下でも凍らず、水も溶かさぬ液体の中に結晶を浸しておいて、低温のままでこの液を固める方法があれば、望みの雪の化石が出来るはずである。コロホニウムをクロロフォルムに溶かした液はかなりこの目的に適うが、その化石では未だ一週間位しか持たない。quomark end - 雪の化石1 中谷宇吉郎
 
 本物の化石のように、何百年も持ちつづける、雪の化石を作って、暖国の子どもたちに見せてみたい、という夢を語る科学者の中谷宇吉郎のすてきな随筆でした。
  

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打あけ話 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「打あけ話」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮本百合子が百年前のモスクワを旅していて、そこであるクラブの集会に出かけて、ぐうぜんにも日本から来た女性と言うことで、スピーチを頼まれてしまった。まだうまく話せない段階で、なんとか話してみた。意外と意図は通じた。本文こうです。
quomark03 - 打あけ話 宮本百合子
  これは小さい経験であるが私には教訓となった。自分に分って貰おうと思う誠意と話したいことがあり、聴衆を信ずれば、人前で話すことも恐くはない。そういうことが会得された。それ以来、必要な時には、私は聴衆がそこに来ている心持の或る面と自分の心持の或る面との接触を信じて講演をするようになった。quomark end - 打あけ話 宮本百合子
 
 近代の貧困の考察と、作家たちが自由を得つつある時代の変化について記していました。すてきな随筆でした。
 

0000 - 打あけ話 宮本百合子

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