小景 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「小景」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物としての本の価値を、作家自身が描いている場面があるのですが、その描写がすてきでした。本文こうです。
quomark03 - 小景 宮本百合子
  私は、一冊本が買えても買えなくても、多くの場合、同じように愉快であった。彼処に、あの煉瓦の建物の中に、彼那にぎっしり、いろいろの絵と文字で埋まった書籍がつまっているのだ。それを知っている丈でも、豊かなよい心持でないか。quomark end - 小景 宮本百合子
 
 物を野方図に手に入れられる状態にあると、むしろその価値を見失ってしまうわけで、百年前のほうがかえって、ものの価値が見えやすく、そこにも近代文学の魅力があるように思いました。
 宮本百合子はこの「小景」で、見ることと眺めることを丁寧に描きだしてゆきます。「美しいものをしんから愛するものは、或る場合痴人のように寛大だ。然し或る時は、狂人のように潔癖だ。」という一文や、ほかにもあまたに美への憧憬が記されています。後半の、貧しさの中で生きる少女への思い、その描写が印象に残りました。
 

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秋 萩原朔太郎

 今日は、萩原朔太郎の「秋」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは萩原朔太郎の一篇の詩です。草木と野分という言葉が印象に残ったのですが、与謝野晶子訳の源氏物語「野分」にはこのような一文があります。
quomark03 - 秋 萩原朔太郎
  今年の野分のわきの風は例年よりも強い勢いで空の色も変わるほどに吹き出した。草花のしおれるのを見てはそれほど自然に対する愛のあるのでもない浅はかな人さえも心が痛むのであるから、まして露の吹き散らされて無惨むざんに乱れていく秋草を御覧になる宮は御病気にもおなりにならぬかと思われるほどの御心配をあそばされた。おおうばかりのそでというものは春の桜によりも実際は秋空の前に必要なものかと思われた。日が暮れてゆくにしたがってしいたげられる草木の影は見えずに、風の音ばかりのつのってくるのも恐ろしかったが、格子なども皆おろしてしまったので宮はただ草の花を哀れにお思いになるよりほかしかたもおありにならなかった。quomark end - 秋 萩原朔太郎
 
 読み比べてみると、萩原朔太郎の風景描写の柔らかな表現が際立つように思いました。
 

0000 - 秋 萩原朔太郎

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論語物語(15) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その15を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 詩とはどういうものかを、孔子が論じているのがおもしろく「人間に人生を見る眼を与えてくれる。人と共に生きるこころを養ってくれる」これが詩だというんです。さらに「また怨み心を美しく表現する技術さえ教えてくれる」とも孔子は言います。
 それから学問にかんして「聞きたがる心というものは、その人の軽薄さを示すだけで、別に大した効能はない」と述べていて、これもなんだかずいぶん高度なことを言うなあと思いました。ふつう、ちゃんと調べるとか聞く耳を持つというのは重大なことだと思うんですけれども、そういえば本物の哲学者は、検索をして答えを調べるということさえせず、時間をかけて考える、らしいです。ぼくは検索をし続けるのが好きなんですけど。
 

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★『論語物語』をはじめから最後まですべて読む(※大容量で重いです)
『論語』はこちら(※論語の原文に近い日本語訳です)

太陽と星の下 小川未明

 今日は、小川未明の「太陽と星の下」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物語の序盤に美しい風景を描きだしていて、パウルクレーの透明な絵画みたような描写でした。動物を愛する少年の思いが描きだされます……。中期手塚治虫の創作の骨子には、この童話も重要なルーツのひとつとしてあったのではないか、と思いました。
 

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聖家族 堀辰雄

 今日は、堀辰雄の「聖家族」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 九鬼という男のことを、人々が回想するところから物語が始まります。
 作中にちょっと記されているんですけれども、この物語は、メリメ書簡集やラファエロの画集が、イメージの原型になっているようです。
 後半を読んでいると、ボッティチェリの謎めいた絵画のような幻想的な風景が立ち現れてきて、美しい描写でした。
 堀辰雄は、いま読んでも現代的です。当時読んだ人々はほんとうに驚いたと思います。
 

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晶子詩篇全集拾遺(44)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(44)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は幼子のための詩でした。「みんなで踊りに行きたいな」という言葉が印象的でした。
  

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