今日は、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
今回から童話を何作か読んでゆきたいと思います。これは小川未明の代表作で、西洋の人魚姫から着想を得て書いたのかと思ったのですが、読んでみると、日本の伝統的な「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」といったような竹取物語とよく似ている物語のはじまりかたで、日本昔話に出てくるような不気味な展開もあって、自然界と近代文明の相剋も描かれていて、公害を描いた文学と、どこか通底しているところがあるように思いました。作中に書きあらわされた「悲しい」という言葉が印象に残りました。
がちょうのたんじょうび 新美南吉
東京に生れて 芥川龍之介
今日は、芥川龍之介の「東京に生れて」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
芥川龍之介がおおよそ100年前の東京の、風景について語っているのですけれども、今の東京とぜんぜんまったくちがう街のことが描かれています。けれどもなんだか、関東全域とか、現代の東日本全体のことと比べてみると、なんだか今の時代と通底しているところがあるように思いました。
古い東京は、このさき二度と未来永劫出現しない都市なわけで、ずいぶん不思議な風物をちょっと見せてもらったような気がしました。芥川龍之介って、ふだんはこの随筆に書いているような話しを、友だちとしていたのかもなあ、と思う作品でした。
春と修羅 宮沢賢治
ダゴン HPラヴクラフト
今日は、HPラヴクラフトの「ダゴン」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
近代のホラー小説の最高峰というかもっとも有名な、ラヴクラフトの暗黒神話が記されているんですけれども、今回、ラヴクラフトが参照元とした美術のことが明記されています。ギュスターヴ・ドレの絵画みたような暗黒大陸を見た、という男の物語です。題名にもなっている「ダゴン」というのは旧約にも記されている、古代の神だそうです。wikipediaのPTSDのページと同時に読んでみました。
化鳥 泉鏡花
今日は、泉鏡花の「化鳥」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
泉鏡花の代表作は、子どもが重大な役を果たしていたりして、子どもから見た世界が描かれていることが多いのだ、と思いました。とくに母と子の交流というのが印象深いんです。
先生よりも、動物の生き方のほうが智慧があって美しいのではないか、と考える幼子の心理が詳らかに記されてゆきます。母から教えられたことのほうが重大に思える。
鳥や草木が人間に見える、また人のことを鳥や動物のように感じる。特定の人間を動物に見せかけて表現すると人種差別になると思うんですけれども、泉鏡花の場合は全人類と動物の垣根が取り払われている心理を書いています。
近代文学の魅力のひとつに、自然界と人類との垣根があいまいで、その描写が現代作品よりも色濃いというところがあるように思いました。
泉鏡花の物語を読んでいると、世界への認識を見失ってしまったような、幼い頃に迷子になってどこに何があるか分からなくなっている感覚が生じるような気がしました。