夜行巡査 泉鏡花

 今日は、泉鏡花の「夜行巡査」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 泉鏡花といえば、流麗な文体で日本ならではの幻想を描く作家だと思うのですが、この代表作はまた赴きが異なっていて、江戸の心中ものというか人情もの、人情本の雰囲気がある、近代文学です。
 八田巡査という若い男と、お香という女と、老夫。この3人が主要な登場人物です。
 オチに心中文学や記事に対する、泉鏡花による短い批評が記されているように思ったんですけれども、作家の物語論が感じられて興味深かったです。
 

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追記
ちょっと今日は風邪をひいていて、何を読んでいるのか自分でよくわかりません……。

幸福 島崎藤村

 今日は、島崎藤村の「幸福」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 島崎藤村と言えば静謐な詩集と、重厚な長編文学を書いた作家だ、というイメージなんですが、今回のは完全に幼子向けの童話です。ちょっと星新一か小川未明みたいな気配のするショートショートです。
 禍福かふくはあざなえる縄のごとし、という諺を思い出しました。幸福にしかみえない人にも、なんだか不幸なことが、あるのだろうか、とか思いました。
 

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歩くこと 三好十郎

 今日は、三好十郎の「歩くこと」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「自分の頭が混乱したり、気持がよわくなったり、心が疲れたりしたときには、私はよく歩きに出かけます。」という文章から始まるこの随筆は、作家の三好十郎が、歩くことや旅をすることについて書いています。この文章が印象に残りました。
 
  もし私という作家の仕事の中に少しでもよいものがあるとしたら、それらが皆、歩くことや旅することと無関係に生れたりできたりしたものは一つもない…………
 
 またこういう指摘をしています。「歴史をふりかえってみても、西洋でも日本でも、えらい思想家や宗教家や芸術家や政治家や科学者などは、たいがい他の人たちよりも、ひじょうによく歩いている。」これは戦後の混乱期に記された随筆なのですが、三好十郎は、歩くことや一人で旅をすることの意味を、あまたの歴史的人物や、あるいは青年の心から読み解いてゆきます。歩くときに自然に生じる、人とモノとの関係のことが記されています。旅をする寸前には自身の健康に気を配っていて、移動をすることによって、いろんな客観的な力が備わってくる。
 ひとつの場所にずっと居ると、無意識に権力に従うようになったり損得を考えて「縦」の仕組みにばかり目がゆくようになるわけですけれども、自分で旅をして自分で歩いてみると、ものごとを横から見る、横の繋がりを発見する。
 現代の作家の随筆を読んでいて、物事に取り組むには、手足を動かして、あるいは体ごと問題にぶつかってゆかねばならない、という話しを聞いたことがあるのですが、今回の随筆はその話しとも通底していて、オチもみごとで、三好十郎はすてきなことを書く随筆家だと思いました……。
 

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トカトントン 太宰治

 今日は、太宰治の「トカトントン」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦後に太宰は小説で、このように記しています。
quomark03 - トカトントン 太宰治
  何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからとも無く、幽かに、トカトントンとあの金槌の音が聞えて来て、とたんに私はきょろりとなり、眼前の風景がまるでもう一変してしまって、映写がふっと中絶してあとにはただ純白のスクリンだけが残り、それをまじまじと眺めているような…………quomark end - トカトントン 太宰治
 
 戦争の危機が去ったあとに無気力にさいなまれていた主人公に対する、親戚の発言に、こういうのがあるんです。「お前は頭が悪いくせに、むずかしい本を読むからそうなる。俺やお前のように、頭の悪い男は、むずかしい事を考えないようにするのがいいのだ」
 中盤で絵画や音楽の話しが挿入されるんですけれども、それがじつにみごとで……。それから泉鏡花の「歌行燈」のことも記していました。こんど読んでみようと思います。
 それから政治に関する複雑な描写があるのですが、太宰治の経歴をwikipediaで読んでいると、15年戦争のはじまるころに、左翼運動をしてこれに挫折している。野間宏が描いた大長編の『青年の環』に登場する、特高に狙われた左翼青年のような人生があったようだ、というのを知りました。
 

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災難雑考 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「災難雑考」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは科学者の寺田寅彦が、天災と人災とを検討した随筆です。
 このミニコラムは2019年10月11日の21時10分に書いているのですが、台風19号による大規模な雨量が予想されるそうです。日本気象協会の専門家吉田氏が天気予報サイトに、こう書いていました。「予想雨量は800ミリ」で、「台風19号は12日(土)の夕方から夜に東海や関東に非常に強い勢力で上陸する見込み」で「自治体から出される避難情報に注意」……するよう呼びかけていました。くわしくはこちらをご覧ください。
 ……それで、百年前の寺田寅彦は、こう記します。
 
  「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考えなければならない。現象のほうは人間の力でどうにもならなくても「災害」のほうは注意次第でどんなにでも軽減されうる可能性があるのである。
 
 寺田寅彦は検証と改善が人災を防ぐ重要な要素だと指摘しています。百年後の現代に読んでも、重要なことが書いてあるように思いました。
 

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注文の多い料理店 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮沢賢治の本や絵本は、真面目なところに置いてあるので、僕は長らく気が付かなかったのですけれど、この作品はユーモア小説として読めるところがたぶんにあるように思いました。ベルクソンの「笑い」の哲学を連想しました。
 

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