イワンの馬鹿 トルストイ

 今日は、トルストイの「イワンの馬鹿」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この物語に登場するイワンはたしかに馬鹿なんですけど、だれもかれも、全員なんだか間が抜けてるんです。イワンに災いをもたらしにきた悪魔もどこかこっけいです。話し自体がこっけいなんです。本文こうです。

  ところが、それを年よった悪魔が見ていました。悪魔は、兄弟たちが財産の分け方でけんかをするだろうと思っていたのに、べつにいさかいもなく、仲良く別れて行ったので大へん腹を立てて、早速三人の小悪魔しょうあくまを呼び集めました。そして言いました。
 
 ヨブ記のヨブに災いをもたらす魔王は、まさしく悪魔の所行をするわけですけど、このトルストイに登場する小悪魔は、単に面白いことをするんです。苦しめられるはずの三兄弟はみんな王さまになってしまいますし。トルストイというと真面目で堅い文学を作った人だという印象があったんですけど(ぼくは「光あるうち光の中を歩め」をいまだに読み終えられていないです)……この童話は名作であるというだけではなくて、シンプルに笑えるシーンがいくつもあって、楽しいように思いました。
 

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晶子詩篇全集拾遺(16)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(16)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 パリを旅行中の与謝野寛(鉄幹)のことを描いた詩がいくつかあって、読んでいておもしろかったです。
 「白金プラチナ色の月」とか「輝紅ピンクの濡れ色」とか「青玉色エメラルドの長い裾」というように、色彩の記述が印象的でした。今こういうサイトがあって、日本や西洋にはどういう名前の色があるのかを調べられるようになってるんです。
 

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きれいなきれいな町 小川未明

 今日は、小川未明の「きれいなきれいな町」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 小川未明と言えば、「赤い蝋燭と人魚」「電信柱と妙な男」など暗いテーマを描いてゆく童話がいくつかあって大人も読めるように思うのですが、今回のは純粋に児童だけのために記された童話になっています。小川未明は、昔話をこのように子どもたちに読んでもらいたかったのか、と思うようなシーンもありました。
 えっ? というような不思議な展開が印象に残りました。あとさいごの数行がちょっと面白い終わり方をしていて、これはもしかしたらつづきは読者の想像に委ねるようにこう、設定された童話なのかも、と思いました。
 

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化け物の進化 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「化け物の進化」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 科学者が、妖怪についてどのように考えているかを、書いているのですけど、おもしろい随筆でした。
 白川静の漢字に関する随筆を読んだときの印象と、似たことを書いていて、学者はこういうように発想して考えを展開するんだ、と思いました。
 暗号的な符合が存在していて、それをとっぴょうしもないような仮説としてまずは位置づけて、そこから検証をしてゆく。検証の結果、謬説だとわかったらそれを斥ける。雷神というような存在と、科学的に有力な仮説とは、そのなり立ちに共通点があるようなんです。あと、この記述が印象に残りました。

  不幸にして科学が進歩するとともに科学というものの真価が誤解され、買いかぶられた結果として、化け物に対する世人の興味が不正当に希薄になった
 
 寺田寅彦は、物理学のみならず「潮汐の副振動の観測」など自然界を観察することも仕事の1つだったわけで、そういう人は神秘を排除しないとでも言えばいいのか、自然科学者って面白い考え方をもつもんだなあ、と思いました。
 寺田は「化け物は実際に当時のわれわれの世界にのびのびと生活していたのである。中学時代になってもまだわれわれと化け物との交渉は続いていた」と書いていて、まるで水木しげるみたいな幼少時代を過ごしていたようです。妖怪好きにはたまらない随筆でした。寺田寅彦はこういうことを書くんです。
 
  神鳴りの正体を鬼だと思った先祖を笑う科学者が、百年後の科学者に同じように笑われないとだれが保証しうるであろう。
 
 寺田寅彦が、鎌鼬の正体を追った記述が興味深かったです。ニールス・ボーアのこともちょっと論じていました。

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雨の昼 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「雨の昼」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮本百合子と言えば、政治的な随筆が有名だと思うんですけど、今回のは映画と演劇の話しです。

  ……………彼女は啜泣きながらお祖母さんの手にすがって、「ねお祖母さん、じゃ人は一生に二度人を愛したり結婚したり出来るものなの? おお! では貞操っていうのは、どういうものなの?」ときくのだけれど、この大切な瞬間のお祖母さんはその経験ふかい白髪にかかわらず、さながら大きい棒パンのようにただ立って、切なげな表情をし……
 
 という記述が印象に残りました。読んでない物語の紹介を読むのも楽しいもんだと思いました。
 
 僕はつい先日、『ハンガンの怪物』を作った監督の最新作を見てきたんですけど、宮本百合子くらい上手に紹介出来たらここにいろいろ書くのになあと思いました。序盤と中盤の、貧しい人たちで結託する喜劇が、ほんとに見てて痛快だったんです。
 
 宮本百合子が、映画館の観客のことを、ちょっと描いているんですけど、今こういうようには書けない、当時の映画は特別なものであって、そのためにこんな丁寧な描写になるんだろうと思いました。

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晶子詩篇全集拾遺(15)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(15)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 どこで聞いたのかどうもちょっと思い出せないんですけど、形容詞を2回つづけるのは表現として良くない、修飾を減らしてシンプルな文章を書いたほうが良いというハナシがあったのをおぼえていて、それでも文学には形容詞を畳みかける文体というのがたしかにあって、普通は記されないような方法で書くのが、文学の1つの特徴なのかな、と思いました。
 「白きたおやかな峰」とか、文学的な言葉づかいに思います。
「小やかな軽き朝飯」ってココだけを抜き出してみると奇妙なんですけれども、詩のはじめからさいごまで読むと華麗な印象の詩になっていました。
 

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