高橋新吉論 中原中也

 今日は、中原中也の「高橋新吉論」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 中原中也は宮沢賢治の詩集を熱心に紹介した詩人なんだと思うんですが、今回、高橋新吉の文学性について論じていて、なんだかすごい作品でした。本文こうです。 
quomark03 - 高橋新吉論 中原中也
  彼がヒュマニティから出発したことは明かだが、立派なヒュマニティは理論を欲するものであるのか、彼は非常に考へる習慣を持つた。けれども彼のやうに一切を演繹することの出来る人は、ヒュマニティの実質を見失ひ易い恐れがある。彼はそれを見失つてゐる。
 彼の詩のモチーフはヒュマニティではなく、言はゞ、「俺は全てが分つて生きてゐるのに、人々は分らないで俺と同一平面上にゐる」といふことのやうだ。彼の詩が扱つてゐるものは何時も普遍的なものだが、それを扱ふ動力は私的感情だ。quomark end - 高橋新吉論 中原中也
 
 ほとんどの「良い芸術家が一通り人生への尺度を持つてから」しばらくものを作れなくなる、そしてこの立ち止まってしまうことが、彼の心臓を目覚ましヒューマニティーの実質を呼び起こす、と中原中也は指摘しています。
 評論と私信が入り混じった、不思議な作品でした。
   

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ゲーテ詩集(47)

 今日は「ゲーテ詩集」その47を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 人影の消えてしまった古城を描いています。城をめぐる豊かな人々の営みの記憶と、静寂に包まれた城壁の対比が鮮やかな、みごとな詩でした……。
quomark03 - ゲーテ詩集(47)
琴と瓶とを手にもつて
この高くけはしい岩の上へ
よく晴れた日にあの人の
登つて行くのを見た時に
荒涼とした沈黙のあひだから
楽しさ嬉しさがまた湧いて出た
ちやうど昔の愉快な時が
も一度かへつて来たやうにquomark end - ゲーテ詩集(47)
  

0000 - ゲーテ詩集(47)

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悶悶日記 太宰治

 今日は、太宰治の「悶悶日記」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
quomark03 - 悶悶日記 太宰治
 月 日。
 月 日。
 月 日。quomark end - 悶悶日記 太宰治
  
 という、空白の日付を15回も使って、太宰治が個人的な日記……のような掌編を記しています。これはいつのことを書いているのか、ちょっと調べてみたんですが、短篇集「晩年」の校正のことを書いているので、1936年の春ごろのことを記した私小説なんです。小説なので虚実入り混じる記載になっているはずなんですが「八年前、除籍された」というのはおおよそ事実で、太宰治は六年前の大学生のころに当時は違法だった共産党の社会運動に参加して、実家から除籍されたそうです。それから太宰は、家族や知人からお金を借りて、文学の創作をしています。最後の日記の一文に、存在しない架空の小説の題名を書いていて、良い作品だとひとりごちています。なんだか20世紀後半の現代美術作品を鑑賞しているような、不思議な印象の小説でした。
 

0000 - 悶悶日記 太宰治

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疑問と空想 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「疑問と空想」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 鳥が飛行中に鳴くのは、音波で周囲の物体を探知して、ソナーとして自分の鳴き声を使っているかもしれない、と寺田寅彦が述べています。
「飛びながらおりおり鳴くのも、単に友を呼びかわしまた互いに警告し合うばかりでなくあるいはその反響によって地上の高さを瀬踏みするためにいくぶんか役立つのではないかと思われる」
 一般的に、鳥の鳴き声は、求愛か、警告か、単純な会話かだと思うんですが、これ以外に、ソナーとして使っているかもしれない。
 ちょっと調べてみると、科学的には、コウモリは超音波を発してソナー代わりとし、物体を検知しているそうです。
 

0000 - 疑問と空想 寺田寅彦

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追記  そういえば猟犬が獲物を追いつめるときに盛んに鳴くのは、明らかにソナー代わりとして、自分の位置と相手の位置を分かりやすくしているんだなあと、思いました。啼かない猟犬は、味方に誤射されてしまいそうですし。
 

細雪(26) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その26を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 いったん東京で暮らすことになった雪子なんですが、今回は、お見合いのためという名目で、関西のみんなのところに帰ってくることになって、これを迎えるために、ちょっと早いけれども雛人形を飾ることにした。おそくまでお雛さんを飾っていると縁起が悪いけれども、早めに飾るのはかまわない、というような話しから26話が始まります。
 大家族の方針としては、鶴子の一家といっしょに妙子と雪子を東京で暮らすようにして、幸子夫婦は関西に残る、ということだったんですが、東京での暮らしが整わず、雪子は「貧乏くじ」いたような狭いところでの生活になってしまっていて、妙子はとうしょの予定とはちがう大阪で、自由な日々を送っているところなのでした。こんかい妙子が、お姉さんの雪子をお迎えにゆくのでした。妙子と雪子の仲睦まじい描写がありました。
quomark03 - 細雪(26) 谷崎潤一郎
 貞之助と三人の姉妹とは応接間の煖炉だんろにぱちぱちはねるまきの音を聞きながら、久しぶりに顔をそろえてチーズと白葡萄酒の小卓を囲んだ。quomark end - 細雪(26) 谷崎潤一郎
 
という、ちょっとぜいたくな暮らしが描かれるんですが、これが戦争末期ごろの危険な時代に記されたと思って読むと、当たり前の暮らしが美しく描かれていることに、源氏物語や「陰翳礼賛」を連想させる、谷崎の雅な文学性を感じるのでした。
  

0000 - 細雪(26) 谷崎潤一郎

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

春 長谷川時雨

 今日は、長谷川時雨の「春」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 日常にある小さな世界を描いただけの随筆のはずなんですが、みごとな詩心の表出する幾つかの小品でした。
quomark03 - 春 長谷川時雨
 春の來た今朝けさは、誰もが陽氣だ。おしやべりは小禽ことりばかりではない。臺所の水道もザアザア音をたて、猫はしきりにおしやれをしてゐる。quomark end - 春 長谷川時雨
  

0000 - 春 長谷川時雨

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追記  美について論じた随筆もみごとでした。