霜夜 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「霜夜」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 芥川龍之介といえば中国の説話を近代的に描き直した作品が代表作だと思いますし、私小説っぽいものはあまり書かなかったと思うんですが、今回の小説は、ある夜の個人的な時間を描きだした、私小説にしかみえない掌編でした。妻と伯母の声が聞こえる。窓の外は静まりかえっていて、霜夜である。
 九条良経の「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む」を題材にした掌編なのでは、と思いました。
 

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ゲーテ詩集(45)

 今日は「ゲーテ詩集」その45を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 詩人がたおや女にひざまずくような詩でした。この詩を皇帝ナポレオンが、読んだのかもしれないなあ……と思いました。
 

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 追記  ナポレオンは「若きウェルテルの悩み」を繰り返し愛読したそうです。

梅雨紀行 若山牧水

 今日は、若山牧水の「梅雨紀行」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 若山牧水の描く、浜名湖から奥三河への紀行を読んでみました。芭蕉や一茶など、日本文学は旅をさまざまに描いてきたと思うんです。漱石も「草枕」で旅の描写をじっくり描いていました。
 「梅雨紀行」を読んでゆくと、はじめは気晴らしにちょっと旅をしてきてはどうかと妻にすすめられて、無計画に家を出た主人公が描写され、中盤で偶然のように立ち寄った、病に臥す友を見舞うんです。ところがその友との友情とか、友の病についてはほんとに幽かにしか記されておらず淡交であって、とくに気にかけている様子も見受けられない。いつか一緒にすてきなところを旅しようと、約束しあったりしている。
 オチのところではもう、たんなる風景であったはずの鳳來寺の山に感情移入して、山に問いかけている。不思議な随筆でした。
 

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予謀殺人 オースティン・フリーマン

 今日は、リチャード・オースティン・フリーマンの「予謀殺人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは古典的な推理小説で、叙述トリックは存在しないんですが、理詰めで犯人を推論してゆくという物語でした。
 犯行の動機と場面描写が納得のゆく内容でした。こういう事件と捜査は、いろんなところで繰り返し起きてきたんだろうなあと思いました。物語の序盤……犯人のペンベリーは若いころから犯罪者で、いちど犯罪を辞めて商売で大成功して里帰りするんです。この男のもとに軽率な脅迫者がやってきて……。つづきは本文をご覧ください。
  

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追記 ここからはネタバレなので、未読のかたは本文を先に読んでみてください。犯行現場と遺体の目撃者と、隠れ蓑に使った木と、犯人の匂いをしらべる警察犬の場面の描写に迫力がありました。濡れ衣で捕まった警察官エリスの冤罪をはらすんですけど、推理の中心には、細工された二本のナイフと、匂いと捜査を攪乱する動物の血や「じゃこうの香水」というのが、ありました。犯人の奸計がすみずみまで暴かれるのが印象に残りました。現実にはもっと泥くさい聞き込み捜査でなんとか冤罪が晴れるのでは、とか思うんですが。最後の最後の、犯人のその後のありかたの描写が、なんともかっこいい小説でした。さいきんhuluで「刑事コロンボ」を見ていて、オチが分かりきっている話でもじゅうぶん楽しめることがあるんだなあとか、思いました。
 

細雪(24) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その24を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 鶴子と雪子が東京に引っ越して、寄せ書きの手紙を受け取った雪子は、お礼の手紙を関西へ送りました。
 物語はとりあえず、幸子の一家を描写するんです。ぼくは細雪と言えば、もうすぐ結婚しそうな雪子と妙子の物語なんだと思っていたんですが、どうも幸子の一家についてもいろいろ書くようなんです。幸子の娘である悦ちゃんの言葉づかいが乱暴なんですけど、谷崎の人間観察が冴える描写に思いました。
 猫を可愛がったり、潔癖すぎて消毒ばかりやらせていたり、という女の家族が記されてゆきます。
 こんかい、家族の中で健康をどうやって維持するのかというのでちょっと対立が起きているところが描かれます。物語のいちばんはじめにも、ビタミン注射していました。健康が損なわれそうな1940年代前後の、飢餓の時代の切実さが、この物語に健康論が立ち現れる原因では、と思いました。
 幸子の夫の貞之助が、仕事で東京に出張します。それで雪子たちの暮らしぶりをはじめてじっくり見てゆくことになりました。東京に行っても雪子はおしとやかで、家族の手伝いをして、子どもたちのめんどうを見ているのだそうです。大戦の終盤の時代に、谷崎は「細雪」の雪子という女性について書いていた。「郷愁」というのが、恵まれた家族たちのなかで生じているという描写でした……。
 

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

あとの祭り 山之口貘

 今日は、山之口貘の「あとの祭り」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 井戸端会議というと、会社でも学校でもよく生じることだと思うんですが、これは本物の井戸端での近所づきあいからはじまる、自分の生活を描きだした私小説です。狭い家の中で女房子どもが暮らしている中ではなかなか原稿が書けず、子どもたちを寝かしつけてからやっと夜に創作の仕事を始められる。ヘトヘトになって眠ると、ある日「ぼく」は突然、起こされてしまう。どうも泥棒が入ったようなんです。どうも深夜にどしん、という音が聞こえた。また夫がうなされて足をばたつかせたのかと思ったら、それがどうも泥棒の足音だったようです……。
 

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追記  漱石の「門」を想起させる話しでした。漱石は奇妙な泥棒の挿話を書いたんですが、じつはじっさいに漱石は明治38年の春ごろに、ほんとに泥棒に入られて服をいろいろ盗まれたことがあったんだそうです。