苦楽 上村松園

 今日は、上村松園の「苦楽」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 日本画家の上村松園が、創作をするときの労苦と喜びについて記しています。「絵を作る時の作家の心境について私はこう考えています」というところから記される随筆です。後半で、単なる趣味のことを書いているんです。これと本業の創作との共通項を述べているところが、創作の意味あいを理解する手がかりになるように思いました。いったん子供時代のことを思いだしつつ、難事にはげむと方向性を見誤りにくいのでは、と思いました。
  

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追記   上村松園は、絵を描くということは、必ず苦を伴うと言うんです。けれども、楽しさもあるのだと記します。

婦人の笑顔 島崎藤村

 今日は、島崎藤村の「婦人の笑顔」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 日本の文学というと、紫式部と清少納言の存在が大きく、「ひらがな」を使って文学を書きはじめたのも女性で、さいしょから文学は女性が中心になって創られてきた、というように思うんですけど、近代文学では男の作家だらけなんです。島崎藤村は日本文化の女性性に造詣が深い作家だと思うんですが、こんかいは古人の記した「おふく」という女性についてごく短い随筆を書いています。
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  中世以来、続きに続いた婦人の世界の暗さを思へば、「笑」を失つたものが多からうと思はれる中で、あれは光つた笑顔に相違ない。quomark end - 婦人の笑顔 島崎藤村
 
 という指摘が印象に残りました。紫式部の描きだした「末摘花」を連想させるエッセーでした。最後の一文が、謎めいていてすてきでした。
 

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(追記  数日間ほど離席していました……更新がちょっとだけ滞っております。ご了承ください。)

細雪(10) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その10を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 貞之助は、この物語に於いて、四姉妹の父の遺志をつぐ大黒柱のはずなんですけれども、ただのお見合いのまえ準備というだけの状態で「離れの書斎に逃げ込んでい」た状態なのでした。男が不在だなあ、というのがこの物語の面白いところで、そういえば谷崎の「卍」でも、これに似た状況はあったなと思いました。今回は、貞之助も協力して、三女の雪子のお見合いへと、出かけることになりました。ただ、急に雨も降ってなんだか運がわるいのかもしれない。美容院の女主人である井谷のとりもちで、瀬越というお見合い相手の男と、ついに対面するのでした。次回に続きます。幸福なはずなのに心労がある、ということが見えてくる小説なのでした。

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

倫敦消息 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「倫敦消息」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 イギリス留学中に漱石はなんだかおかしくなった、という奇妙な噂があったらしいんですが、そのころにじっさいの漱石はどういうことを考えていたのか、ロンドンでの出来事を漱石が記しています。
 まずはイースターのことや旅行のこと、朝食の焼パンやベーコンのことなどが記されています。
 漱石は英語や英文学を学びながら、2つの拠点がある状態でこう考えます。
 日本人のほとんどが「日本に満足して己らが一般の国民を堕落の淵に誘いつつあるかを知らざるほど近視眼であるか」ということを論じています。
 「吾輩」の日記のような記載が続いてから、トルストイが宗務院シノードから破門されたことについて書いていました。これは当時は世界的に報道された問題で、ネットではこの記事で詳細に記されていました。
 イギリスで下宿先の引越をせねばならなくなった事態や、英語の専門家である漱石が、ネイティブからいろいろ得意げに教えられてちょっと辟易とした話の箇所がなんだかユーモラスでした。
 この本は実話に近いものだと思うんですけど、ぼくとしては「吾輩は猫である」の中盤部分よりもずいぶん興味深い物語であると思いました。
 最後にどうしてこのロンドン日記を書いたのか、正岡子規のために書いた、という一文は、自分としては漱石文学全体を読むにあたって重要な記載であると思いました。
 

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夕暮の窓より 小川未明

 今日は、小川未明の「夕暮の窓より」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 海外の哲学者は詩をあまたに書く、と聞いた時に、近現代の日本文化に、そういうものがあるんだろうかと思って驚いたんです。
 今回の小川未明は、いつもの童話とはちがって、散文詩と思索の入り混じったようなものを書いていて、なんだかすてきでした。
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 私は、時間といい、また空間という、仮定された思想のために多くの人々が、生活を誤謬の淵底に導きつゝあることを知った。此世に時間というものはない。此の世に空間と名づけられた形あるものもない。ただ、それが観念に過ぎぬと知った時に自分等の生活は、時間と空間の中に営まれているべきものとは思われない。quomark end - 夕暮の窓より 小川未明
 

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追記  小川未明の童話の中に時折、賢治の描いた石炭袋のような不思議な気配が生じていることがあると思うのですが、それを小川未明が書いた事由が、本稿の終盤に記されていると思いました。

ゲーテ詩集(30)

 今日は「ゲーテ詩集」その30を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 すぐれた人が、自分と同じような小さい問題で悩んでいるのを知ると、なんだか共感する、と思うんです。偉大な文学を残したゲーテは、雄雄しいものだけを描くわけではなく、ときおり弱い人間性のほうをじっくり描きだし、読者からの共感を生むというところに魅力と特徴があると、思いました。
  

0000 - ゲーテ詩集(30)

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