子供役者の死 岡本椅堂

 今日は、岡本椅堂の「子供役者の死」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 江戸時代の六三郎という十六歳の狂言役者が、どうも死んでしまったという。六三郎は人気者の美青年なんですけれども、やくざの大親分のかこっている女性と恋愛に至ってしまったようなんです。
 本物のヤクザの親分なんです。だから六三郎はいろんな人に勧められて、いったんは泣く泣く別れ話を承諾したのですが、それで終わらなかった。いったん物語はこれで終わったな、というところからの、真相編というような急展開があってみごとな小説でした。ちょっとこれは……近代作家にしては迫真の物語展開で、すごいものを読んでしまったと思いました。
 

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追記  ここからは完全にネタバレなので未読の方はここを読まないで欲しいんですが、ヤクザ側によって私刑ではないんですが異様な奸策をめぐらした私設の裁判が行われてしまう、とうぜん六三郎はこれに気がつかなかった、それが遠因となって不幸が生じる……真相が明かされるところに意外性があって興味深かったです。
 

鎖工場 大杉栄

 今日は、大杉栄の「鎖工場」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 大杉栄というと無政府主義者の思想家だと思うんですけど、その大杉栄が純粋な短編小説を書いています。夢十夜かと思うような、謎めいた不条理小説を書いています。自由の逆側の事態について、異様な筆致で書いていて近代SF小説のような格好良さに魅了されました。本文こうです。
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 俺はへーゲルの言葉を思い出した。「現実するもののいっさいは道理あるものである。道理あるもののいっさいは現実するものである。」quomark end - 鎖工場 大杉栄
 

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細雪(2) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その2を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 おもな登場人物は……蒔岡まきおか4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)です。
 これまでの展開は、三女の雪子がどのようなひとと結婚をするのか、というのから物語が始まっています。
 谷崎と言えば、美や乱調を描く作家なので、でたらめに読んでみてもきっと楽しいんだろうと思って読みはじめたんですけど、なんだか緊張する内容なんです。小説や物語は、自分と関係の無い他人のことをのんびり観てゆくことができるから、緊張しないで済むはずなんですけど、ホラー映画や大長編文学だとどうもそうはゆかないようです。他人ごとのはずなんですけれども、なんだか緊張して読んでいます。谷崎の筆致に迫力があるから、父の亡くなったのちの四姉妹がどうなるのか、妙に気になってくるのでした。良いところの家柄というのをぼくは体感的にまったく知らないのでそこは共感しにくいんですけど、なんだか衰えてゆく事態に対応しなくちゃいけない、という心理に注目して読んでゆきました。
 父が亡くなるまえに、父のもってきた縁談で結婚をした幸子はそれほど問題なく暮らしているようなんですけれども、雪子はころあいがあわずに、父の晩期に婚約者を紹介してもらえなかった。父の意思を継いでくれたはずの貞之助はどうも上手い縁談を持ちこめなかった。 
 雪子は、古い家柄のぜいたくさを忘れられずに縁談で行き詰まっているところなんです。
 細雪は漱石の文学と似たところがあって、武家や貴族が廃止されていって、結婚や恋愛の形態が変化をした、という感じのことも描いているように思います。本作では、主人公の蒔岡家は十数年以上むかしの大正時代に豪商のお金持ちで良い家柄だったそうです。作中で脇役の男性がこう述べるのが印象に残りました。
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  蒔岡さんと私とでは身分違いでもあり、薄給の身の上で、そう云う結構なお嬢様に来て戴けるものとも思えないし、来て戴いても貧乏所帯で苦労をさせるのがお気の毒のようだけれども、万一縁があって結婚出来るならこんな有難いことはないquomark end - 細雪(2) 谷崎潤一郎
 
 こういう縁談がどうも上手く進まず、雪子はちょっと時代に取り残されているような感じがあるんです。これは書かれた年代も舞台も十五年戦争が悪くなってゆくころで五年後には豊かさが世間から排除されてゆく時代なんです。ぼんやりとした理由で、幸福が遠のいてしまっているけれども、なんとか豊かに生きようとしている。そこは現代に読んでも響いてくるところに思いました。
 

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

中毒 織田作之助

 今日は、織田作之助の「中毒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 スタンダールが自ら選んだ墓銘があまりにも的を射ているので、これがスタンダールらしい文学の世界観の代表になっている、このことについてはじめに論じています。名言がちょっと都合悪く作用してしまうことについて書いているんです。織田作之助は意識的にか無意識的に、ちょっと誤訳をしていてスタンダールのいう「愛した」の部分を「恋した」と翻訳しそこなっているのが妙でした。
 中盤から、織田作之助の父の話が記されるんです。近代作家を読んでいていちばんイメージと違って意外だったのは、与謝野晶子が随筆で男性批判をするところ、そこでの社会の考察の仕方の、容赦のなさと批評性の鋭さにおどろいて、これがいちばん印象に残っているんですけど、こんかいの随筆で織田作之助が父を考察する、そのまなざしにも唸るところがありました。単純化させてはいけないところを、父と私、というテーマで描きだしていました。
 少年時代の記憶がみずみずしく語られていて、織田作之助の筆致がみごとなのに驚きました。恋愛や喫煙での醜態がながながと記されて、カレーライスを食べる時にさえ煙を吸いまくっている描写あたりで呆れかえってしまいました。「近代作家は駄目人間だらけだ」というのは誤情報なのでは、とぼくは今まで思っていたんですが、この随筆の後半はなかなかひどい作家生活が描かれていてデカダンぶりがすごかったです。
 

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ヒノエウマの話 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「ヒノエウマの話」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ぼくはヒノエウマというのをまったく知らなくて、今回辞書でちょっと調べたんですけど、ハレー彗星なみにめったに起きない、60年に1回の、干支の組み合わせだそうです。ヒノエウマの迷信は、ある演劇からはじまったそうです。戦後だいぶたった60年代になってもこの迷信は影響力があったというのが驚きでした。現代でも5%くらいの人がこの奇妙な干支を気にするらしいです。おそらく数年後にもたぶん、これで出生率がほんのちょっとだけ下がる可能性がある、らしいです。極端に非科学的な迷信なんですけど、60年代ではほんとに出生率に影響があって、記録に残っているんです。総じてみたら日本は幸福なお国柄だと思うんですが、いろんなことを気にして、奇妙な犠牲者を作りつつ、こういう社会が作られたんだなあと、坂口安吾のこの本を見るまでまったく知らなかった、日本人の隠された特徴をちょっと知りました……。 
 調べてみるともともとは中国でヒノエウマと丁巳の年には天災が多い、という伝承だったそうです。この伝承は、数十年に一度は防災のことを考えてみましょうという意味があるわけで、意味のある言い伝えだと思うんです。それが変異して、まったく価値の無い都市伝説になっちゃったようです。坂口安吾はバカげたことを無視せずにちゃんと考えて諭そうとするところがすごいと思いました。本文こうです。
quomark03 - ヒノエウマの話 坂口安吾
 すべて迷信の消滅はこれを期待しない方がよい。そしてただ銘々の教養や勇気や楽天性によって自分がその受難者たることを避けるように心掛けるのが何よりであろう。quomark end - ヒノエウマの話 坂口安吾
  

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ゲーテ詩集(22)

 今日は「ゲーテ詩集」その22を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 ふつう文学というと、権力に対して批判的なものが多いと思うんですが、ゲーテは権力者の仕事もしていて、影響力のある政治家が市民を説得するような話法というのが、今回の詩にはあらわれているように思いました。
 もうひとつの詩では、ギリシャ神話のエンデュミオーン(エンディミオン)が記されます。エンデュミオーンはセレーネーと結ばれて、ナルキッソスが生まれます……。
 

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