ゲーテ詩集(13)

 今日は「ゲーテ詩集」その13を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 今回の「三月」というのは自然な恋愛詩で、まだ冬の去らない時期に恋人の幸福について描いています。恋人だけのための詩にも読めるのですが、まだ冬が終わらない1人の人間の視点から幸福を思い描いているのが、自然な共感を生んでいるように思いました。「燕でさへも嘘をつく」という言葉の意味が謎で、なんだがすてきな詩でした。
 

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生物学的の見方 丘浅次郎

 今日は、丘浅次郎の「生物学的の見方」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 近代日本では、生物学的な観察が欠落しているので、この見方を伝えたい、という随筆です。生物学的なものの見方というのは、それは人間をれっきとした動物として見る、ということで、そう言われれば、コロナ対策はこの、ツバをかけないとか、顔を洗うとか、手を水で洗うとか、潜伏したウイルスがどうなるか何日間かおこもりをして様子見をするのが重要だとか、けっこう原始的な対策をしていったわけで、生きものとしての人間をよく認識することも重大だったわけで、100年前の学者の随筆なのに、今でもちゃんと役立つのがすごいなあと思いました。
「たとえば成人の頭骨の側面には耳殻じかくを動かすべき筋肉がいくつもあるが、何故なにゆえかかる不用の筋肉がここにあるか」というと人間の胎児と魚には、同じ耳の穴の構造がある、という指摘があり、人類はほかの動物と共通しているところが多い、と分かります。人類のみがとくべつなのではないですよ、ということを記しています。そこから、うぬぼれる人間の問題点を指摘しているのが、なんだか笑う内容でした。うぬぼれを減ずるには、他の人から自分を見て、動物の視点から自分を見る……。さらに、多様な方面から人間を見てみようと、具体的に提唱しているので本文をまず読んでみてください。三角法のように、二点から対象をみくらべて、客観的に観察してみる。
 これとおなじように、新しい思潮が生じたときにも、その一点のみに固執するのではなく、生物学的にものを見る習慣を持って「いかなる生物が存し、いかに生活しているかを学」び、多角的な観点から観察をする心構えでいれば「極端の空論に走ることを防ぐこともできよう」と述べていました。ネットで本ばっかり読んでいても人生すすまないかも……とか思いました。ただこれちょっと、ほかの随筆も読んでみたいです。
 

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五月の詩 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「五月の詩」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 坂口安吾と言えば、戦後になってから特攻隊の死と生について論じた、武士道の次の世界について描く、迫力のある作家だと思うんですが、今回は、武士の物騒なはなしから随筆がはじまります。現実に起きたおそろしい話もしていて、これって怪談のつもりではなく書いているのが、なおさら怖いと思いました。度胸だめしで、無理をしすぎて恐ろしいことが起きてしまうことをいくつか記しています。坂口安吾の「いくら僕が馬鹿でも、そんな意地は張らぬ」という記載が妙に印象に残りました。
 戦時中の新聞をまとめて読んでみるということをしたことがあるんですけど、このころの新聞は防衛論も非論理的でひどいものなんですけど、これを戦中なのにしっかり批判出来た作家は、ほとんど居ないように思うんです。坂口安吾はそのへんもはっきりと批評していて、時代を超える人は……すごいもんだと思いました。
「日本といふ国は変な国なんだ」という指摘とその前後に読み応えがありました。
 坂口安吾はぜったいにこの随筆で感動をもたらそうとしていないはずなんですが、安吾の怒り、不遇の者の心情を慮る態度に感嘆せざるを得なかったです。こんな危険な時代に、どうして無事でずっと太く生きられたんだろうかと、思いながら読みました。悲惨な戦争が終わるまであと3年もかかる、1942年の随筆でした。

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死せる魂 ゴーゴリ(3)

 今日は、ニコライ・ゴーゴリの「死せる魂」第3章を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 主人公のチチコフは詐欺師なんです。これが明記されるのが全体8%あたりの第1章さいごの行です。名作ではよくある、信用の出来ない主人公(道化のような主人公)の目を通して、異化された世界をのぞき見てゆく、という仕組みなんです。前回、亡くなった農奴たちを買い取る、という謎の仕事に成功したチチコフは、次の大地主ソバケーヴィッチのところへ、従者とともに馬車で向かっています。ところが酔っ払いの部下が運転する馬車が横転し、貴族チチコフは泥まみれになってしまいます。
 夜もふけて雨も激しく、野宿することもできない状態で、まったく見知らぬ村に迷い込みます。よく見ると、意外と裕福な農村なんです。そこでチチコフは、大きな屋敷に入り込んで泊めてもらい、翌朝になると、ここでも謎の仕事をしてやろうと思いつきます。
 二〇〇年ほど前のロシアでは、権力をもつ人に対してペコペコしてしまう習性があるらしいです。ほんとうなのか分からないんですけど、ゴーゴリはそう記しています。ただの冗談なのかもしれないんですが。本文こうです。
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 ロシア人の中には、相手が農奴を二百人もっている地主と、三百人もっている地主とでは、話し方をすっかり変え、三百人もっている地主と、五百人もっている地主とでは、又まるで違った話し方をし、五百人もっている地主と、八百人もっている地主とでは、これまた別な話し方をするといった名人がいる。quomark end - 死せる魂 ゴーゴリ(3)
 
 ギリシャ神話の神プロメシュースのごとく振る舞っていた男が、じぶんよりも地位(またはお金)がある人にでくわすと「蠅よりも更に小さい、砂粒ぐらいにちぢこまってしまうのだ」というんです。
 
 ぼくはまだこの物語がどういう転結に至るのか知らずに読んでいる最中なんですけれども、チチコフはとにかく、死んだ農奴を、譲れるだけ譲ってもらって、雇えるだけ雇ってしまいたいと、考えているようです。買えるはずのないものを買うつもりでいる詐欺師なんです。魂を買うつもりなのか、なにをどう盗むつもりなのか。どういう罪を犯すつもりなのか、謎めいているのでした。本文では、死んだ農奴を買うくだりはこう記されています。80人くらいの農奴をかかえる村の女主人がこう言うんです。
「役人がやって来ては、人頭税を払えって言いますだよ。農奴は死んでしまっているのに税金だけは生きているとおりに取りたてるのです」という女地主ナスターシャ・ペトローヴナにたいしてチチコフは死んだ農奴を「十五ルーブリ」で買い取り「納税の義務は残らず私が引き受けるのです。そのうえ、登記も」済ませると言うんです。ところがどうも怪しい取引なので、ペトローヴナおばあさんはどうも気が進まない。
 
 これ……現実にもしこういう人が居たとしたら、どうかんがえてもチチコフと関わるべきではないんですよね。小銭が手に入るとしても、どうしてもなにか、言いようのない疑心というのが生じます。説明できないんだけど、逃げたほうが良い、という状態なんです。詐欺の仕組みは分からなくても、分からないなりに断ったほうが良い、という提案をされるんです。本文では、おばあさんはこう言います。
quomark03 - 死せる魂 ゴーゴリ(3)
 「それがねえ、どうも、まるで聞いたこともないような、おかしな商いだもんでね!」
 ここでチチコフは、すっかり堪忍袋の緒をきらしてしまい、腹立ちまぎれに椅子を床に叩きつけざま、悪魔を引合いに出して老婆を罵った。quomark end - 死せる魂 ゴーゴリ(3)
 
 おばあさんはまっ青な顔をしてしまいます。ひどい状態です。チチコフの本性がこの、第三章の中盤から見えてきます。ついに大ウソを言っておどしてくるんです。「キリスト教徒としての博愛心から、あんたのためを思って言い出した」「とっととくたばってしまうがいい、お前さんの持村も一緒に滅びてしまうがいい」こんな怒りの言葉を吐きます。
 怒っている人にたいして、つい不快でめんどうなので、異常な提案を受け入れてしまうんです。死んだ農奴を売り払うということに同意してしまう。怒っている人の要求というのが通ってしまう。こういう人からはさっさと離れて何も言わないというのが最善策だと思うんですが、相手は押し売り以上に強引なので、悪い話しを聞き入れてしまった。どうして通ってしまったのかというと、大きなお金がどうも動きそうだからです。女主人はちょっとした欲が出てしまったんです。そこをつけ込まれてしまいました。
 チチコフはヤバイ男なんです。その気にさせるのが上手いんです。飴と鞭を使い分けて相手を翻弄してしまう。いろんなものを買い取りますよと言うんです。「買いますとも、ただ、今じゃなく後でね。」「買いますとも、買いますとも。何でも買いますよ」と言うんですが、いっこうに金は払わないわけです。
 安定した儲けの出ていない自分としては、人ごとではない描写に思いました。こんな口のうまい詐欺師に出会ったのは運が悪かったと思うしかないのか、あるいはもっと注意深く相手を疑って生きる必要があるのか、なんだかよく分からない、謎の領域にチチコフが立っているんです。もっと正直にイヤなものはイヤだと言ってあっさり断って、去ってもらえるはずなんですが。チチコフはけっきょく、死せる農奴たちを買い取って、次の町へ向かうのでした。いったいどういう詐欺なんでしょうかこれは。今のところ、ぼくにはよく分からないです。
 

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ゴーゴリの「死せる魂」第一章から第十一章まで全部読む
 
ゴーゴリの「外套」を読む

麦畑 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「麦畑」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮本百合子が古い故郷の女たちを描いている随筆です。うこぎ、という植物を生け垣にしておいて、それをお味噌汁に入れて食べるそうです。食べられる垣根というのは不思議な感じがします。それから百年くらい前に女たちが好んでいた占いについて書いています。近未来のできごとをなぜか言いあてる占い、偶然にもよく当たる占いについて、農作業をしながら話している……。

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追記  ポロックでもデュシャンでも、偶然を上手く活かすのが美術の重要な技法ですけれども、占いや、恋愛や交流や未来について考えることも、この偶然性というのをどう活かすかにかかっているのでは、とか思いました。
 

Audibleのおすすめ文学作品

 AmazonのAudibleは、今キャンペーン期間中なので0円で数万冊の本を聞くことが出来ます。
(通常は月額1500円です)
 Audibleは2022年現在、2種類の本があります。Audible会員なら0円で聞き放題の本が数万冊あって、千円以上を払わないと読めない本もたくさんあります。今回は、聞き放題のオーディオブックを何冊か紹介したいと思います。
 
ミヒャエル・エンデ『モモ』 ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』
ぼくは『モモ』を何年か前にKindleで完読したんですけど、Audibleでも0円で聞けるようになっています。
オーディオブックで小説を聴くときは、wikipediaで登場人物表を表示しながら聴くと、内容を理解しやすいです。眼で読めば分かるはずなのにどうも耳だけでは理解しにくい、ということがいくつかのオーディオブックを聞くと分かるんですけど、ぼくは「ブッダ」の本がなぜか聞きやすかったです。誰もが理解できるように、短くうまくまとめた教えだから、耳で聞いても分かりやすいんだと思います。耳で聞きやすいというと「民話集」も聞きやすくてお薦めです。そもそも口伝の文学作品ですし。
 
ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
ラジオドラマ風に演出されたオーディオブックです。

『茨木のり子詩集』 劉 慈欣『三体』 パウロ・コエーリョ『アルケミスト: 夢を旅した少年』 ジョージ オーウェル『一九八四年』 アゴタ・クリストフ『悪童日記』  ドストエフスキー『クリスマスと結婚式』 レイモンド・チャンドラー シェイクスピア フランツ・カフカ 芥川賞 漢詩 老子 ほかに「菜根譚」「源氏物語」や「方丈記」や「徒然草」「土佐日記」「平家物語」「今昔物語」「おくのほそ道」などの古典名作の数々がおすすめです。
 
登場人物が多い長編文学は、手もとに紙の本か電子書籍があって、眼と耳を同時に使わないと、ちょっとこれはむずかしい、目隠し将棋のようになってしまいます。ですので、オーディブルの中から読みたい本を見つけて、kindle版を購入するか、図書館で借りてきて机の上に開きっぱなしにしながら、眼と耳で読むのをお勧めします。あと、詩集は耳だけでじゅうぶん楽しめます。エッセイも耳のほうが楽しめるくらいです。やさしい文章でしるされた本を探すことをオススメします。
 

digitalbookartimagesono00743 - Audibleのおすすめ文学作品

 
1日に10数時間ほど再生しても100日で100冊以上はたぶん読めないです。ほかにもユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』『ホモ・デウス』や、ジャレド ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』も、はじめから最後まで、完読できます。あっとうてきな気合と知力とメモの技量さえあれば……。
 
聴き放題の0円で聴くには10日以内の2022年5月11日までに【Audible会員2カ月間の無料体験】に登録する必要があります。
 
 無料期間中に解約する方法はこちらをご覧ください。
 
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