ゲーテ詩集(5)

 今日は、「ゲーテ詩集」その5を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 ゲーテというと、繊細な若者の心情を詳らかに描きだした代表的小説がありますけれども、ゲーテ本人はものごとに動じない、迫力ある人生を歩んだんだと思います。繊細の対義語は大雑把で、ゲーテの人格にそういうところは感じないのですが、ゲーテが今回の詩に記したように、無頓着な性格、というところがゲーテの魅力でもあるように思いました。「無頓着な女」……。
 
清らかに晴れた春のあさ
若くて美しくて苦労を知らぬ
羊飼ひの娘は歌ひながら行つた
その歌は野末に響いて行つた
ソララ!レララ!
  

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語られざる哲学 三木清

 今日は、三木清の「語られざる哲学」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ぼくはKindleアンリミテッドのキャンペーン期間を利用して、つい昨日までamazonの電子本をiOSで音声読み上げして楽しむ、ということをやっていたんです。それで、エンデの「モモ」や、鴨長明の「方丈記」や、デカルトの哲学書を読んでいたんです。今なぜか、この2022年にどういう理由か分からないんですけど、Amazon利用者のなかでは、哲学関連でデカルトがどうも人気なんです。デカルトは、あらゆることを疑ってみることによって、偉大な哲学を見いだします。ふつう疑い深いと自分も疑ってしまって、疑い続けて自分の人生を壊してしまう、パン屋が小麦粉をこねる水車の謎を追ううちに水源の源をさぐって森の奥底で迷ってしまう、という展開が多いと思うんです。デカルトはその逆で、疑うほどに自己自身の確実なところだけが明らかになっていったんです。
 あらゆるものを疑ってゆくと、疑いを持っている自分の存在だけは疑いようがないという事実を発見した。もっとも信頼できるのは自身の存在そのもののみで、そこから世界のありさまを考えてゆく……。「我思うゆえに我あり」という哲学を記して千年後にも(おそらく)語りつがれる、そういう偉大な学問をのこしたんですけど、後の哲学者から、デカルトが自己の存在証明をしてからすぐに神の存在を証明しようとする箇所での間違いが繰り返し指摘されているんですけど、そういう間違いがあっても、根本的なところで過去の常識をまるごと覆す哲学を作れた、というのがすごいなと思いました。
 他人や社会を変えるよりも、自己の欲望を変えることを重視した、デカルトの思想がいま読んでも面白いように思いました。
 デカルトは、国家や神学を探究するよりも、ほかならぬ自分自身を探究してゆくほうが信頼に値すると言うんです。どうしてかというと、自分で自分の方針を決めて、もしそれが間違っていると、自分で自分に負荷をかけてしまうわけで、自分の考えを深めたばあいは思考と結果が結びつきやすくて実践的であって大まちがいの考えを修正しやすい。
 デカルトはなんでも疑えと言っているわけではなく、自分でしっかり考えた方針はコロコロ変えないほうが良い、自分で自分の根本的なところを否定すると森で迷って同じところをクルクル廻っているようなことになってしまう、と記しています。
 三木清は「語られない哲学」について論じるにあたって、デカルトについてこう記しています。
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  カントは哲学に正しき問い方を教えたものとして、デカルトは哲学の正しき出発点を見出したものとして殊に称讃されている。語られざる哲学の問題は、一体、いかにして正しく提出され得るであろうか。quomark end - 語られざる哲学 三木清
 
 不言実行における不言の思想の展開について、三木清が論じています。三木清は、哲学者カントを重大視し、文学においてはゲーテに私淑していた、と本文に記していました。親鸞や、生活や、詩や、ダヴィンチや、あらゆることを随筆のように記しています。この文章が印象に残りました。
quomark03 - 語られざる哲学 三木清
 番犬のような吠えつく心、刑事のような探る心、掏摸すりのような狡い心を棄ててしまって、嬰児えいじのような無邪気で快活な心に還ること(略)社会の人々がもっと正直で無邪気になっておのおの美しい夢に酔うことができたならば、私たちの社会はどれほど改善されるであろうかquomark end - 語られざる哲学 三木清
 
 三木清は、苦についてさまざまに論じたのちにこう記すんです。「私が楽しみに多くの価値をおくところの理由は、それが素直な心を成長させやすいことを思うからである」このあたりの、後半の議論がすてきでした。くわしくは本文を読んでみてください。
  

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新しい読書法(1)

digitalbookartimagetotteoki01 - 新しい読書法(1)

 今回は新しい読書法について書いてみようと思います。いままで読めなかった難しい本を読破すると、とくべつな映画を見終えたとき以上の、感銘を受けることがあります。けれども本を読みすすめるのはけっこうむつかしいです。ゲーム攻略サイトではどういう操作をするとうまく遊べるのか、その方法が記されています。このページでは、本を読むための技術的な手順を記してゆこうと思います。新しい読書法について簡単に述べますと、いままでは手で紙をめくって、眼で読むだけでしたが、この新しい読書法では、眼と耳を同時に使って読書をします。
 第一回は、Kindle Unlimitedの難読書を、音声読み上げで読破する方法を記してみます。必要なものはiPhoneかまたはiPadです。他のスマホでも、同様の方法で、音声読み上げが可能です。ぼくはiPadを使っています。

◆行程1
 まず、Kindle Unlimitedに月額千円くらいで加入します(キャンペーン中なら月額数百円です)。また月額数百円のamazonプライム会員でも、幾つかの名作を0円で読むことが可能です。1カ月限定で加入してみることをお勧めします。

◆行程2
 つぎに、読みたいのに読めなかった傑作本を数冊ほど選んで、0円で購入します。古典の現代語訳をオススメします。

◆行程3
 iphoneかipadにkindleアプリを0円でダウンロードします。PC版は残念ながら音声読み上げ機能は使えません。kindleをたちあげて、序文や目次をすっとばしまして、第一章のはじまりの文章を表示させます。
 
◆行程4
 人差し指と中指の二本指を「閉じたピース」状態(閉じたチョキ)にして、画面の上から下にスライドします。そうするとAIの自動音声読み上げが開始されます。
くわしい「スマホの読み上げ」の操作手順は、こちらのAbroader氏の解説動画を見てください。

2honyui01 - 新しい読書法(1)

◆行程5
 イヤフォンなどを使って自動音声の朗読を聞きながら、同時に文章を目で読みすすめ、気になった文章をマークアップしながら読書します。iPadなどの画面分割機能を使うか、別のPCかタブレットを使って、二画面状態で、文章を眼と耳で読みすすめます。
 耳と眼を同時に使うと、読書の集中度合いが二倍以上たかまって、映画館で映画を鑑賞するみたいにすんなりと最後まで読み終えられます。
 この方法なら、1カ月で数十冊の難読書を読破することも可能だと思います。お暇な時期にぜひ、今まで読めなかった古典の難読書の読破に挑戦してみてください。
 
 アマゾンのKindle Unlimitedにはあまたの本があるのですが、どこにどんな本があるのか、ちょっと分かりにくいのです。公式のamazon検索枠からも検索しにくくて、Kindle Unlimitedにどういう本があるのかけっこうよくわからないのです。Kindle Unlimitedにどのようにすてきな本があるのか、以下のリンクから知ってみてください。とりあえず1カ月だけ加入してみるのをお薦めします。
【Kindle Unlimited】の詩集 NHK100分de名著 古典新訳文庫 万葉集 古事記 源氏物語 菜根譚 怪談 名画 名曲
落語 俳句 料理 SF 絵本 まんがで読破シリーズ マンガでわかるシリーズ 科学 
漢詩 孔子 老子 荘子
光文社新書 PHP新書  文春新書 角川新書 NHK出版新書 ヤマケイ新書 グーテンベルク21
 
 『グーテンベルク21』と『古典新訳文庫』がとくにお薦めです。
Kindle Unlimitedには、都会の本屋くらい、しっかり本が揃っているんです。マンガもけっこうあって、ぼくは年に数回くらい加入しています。
  
amazonをほとんど使ったことが無い場合は、明かりの本の名作を1冊選んで、0円オーディオブック機能を使ってみてください。
 

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読書をするときは、黙読画面と、音声画面と、ノート画面と、3つくらいの画面を同時に表示して読みすすめると便利です。

惑い(4) 伊藤野枝

 今日は、伊藤野枝の「惑い」その4を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 第四章では、諦めに関する議論が主人公逸子と作者伊藤野枝によって展開されます。旧家の取り決めた人生以上に、知的で豊かな人生を歩みたいということで、彼女は古里から出奔した。穴蔵から抜け出せたとおもったらこんどはよりいっそう狭い穴蔵に閉じ込められてしまったような、閉塞感が逸子をおおっている。
 ようするに今の逸子は「引っ越しを失敗しちゃった人」みたいになっているんだなあと、思いました。ひとたび出奔すると、もう出奔できない……。引っ越そう、という思いつきはみごとだった。けれども引っ越し先を間違えて、もともとよりも暮らしが悪くなってしまった、じゃあどうするか、という感じです。
 逸子の状況では、新しい展開をしようと思ったら、残された家族はどうにも不幸になりそうなんです。逸子にとっては、新しい恋愛と現状打破の二つは組み合わさって展開してきているんです。ダイナミックなんです。話自体は貧しさと労苦について同じように何度も記されていて地味なんですけれども、逸子の考えは革命的なんです。逸子は新しい生活について考えています。
  

0000 - 惑い(4) 伊藤野枝

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第一回から第九回までの全文をはじめから最後まですべて読む(※大容量で重いです)

セメント樽の中の手紙 葉山嘉樹

 今日は、葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 労働と貧困とプロレタリアを描きだした文学者として有名な、葉山嘉樹の短編小説を読んでみました。現代にも溶接や高層建築の現場には、この小説に記されているのと同じように事故が起きているんです……。おおよそ百年前の小説には、いまでは常態化して見落とされているものごとが特別なものとして中心的に明記されているので、その部分で勉強になるように思いました。
 

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風と光と二十の私と 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「風と光と二十の私と」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これをぼくは五年くらい前に読んだのですが、再読してみました。安吾の若い頃を描きだした自伝的小説です。家が貧しかったので大学には行けず、「小学校の代用教員になった」安吾のことが記されています。「そのころ」「世田ヶ谷の下北沢」は「竹藪だらけで」「麦畑」と「原始林」につつまれた田舎だった……。
 小学校の先生をしていたほんの短い期間のことを中心に書いています。「コンニチハ一つ書くことのできない子供がいる。二十人もいるのだ。このてあいは教室の中で喧嘩ばかりして」いる。安吾のこの文章が印象にのこります。
quomark03 - 風と光と二十の私と 坂口安吾
 本当に可愛いい子供は悪い子供の中にいる。子供はみんな可愛いいものだが、本当の美しい魂は悪い子供がもっているので、あたたかい思いや郷愁をもっている。こういう子供に無理に頭の痛くなる勉強を強いることはないので、その温い心や郷愁の念を心棒に強く生きさせるような性格を育ててやる方がいい。私はそういう主義で、彼等が仮名も書けないことは意にしなかった。quomark end - 風と光と二十の私と 坂口安吾
  

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 安吾は本作に「魂」という言葉を九回ほど書いていてその箇所が印象にのこります。『私のあこがれは「世を捨てる」という形態の上にあった』という箇所もすごかったです。