ゲーテ詩集(1)

 今日は、「ゲーテ詩集」その1を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 今回から100回かけてゲーテの詩集を読んでゆこうと思います。むかしいちど読んだことがあるんですけれども、これをもういちど長期間読んでみたいと思っています。この詩集のはじまりにはこう記されています。
quomark03 - ゲーテ詩集(1)
 早く響いたものは晩く響く
 幸福と不幸とは歌となるquomark end - ゲーテ詩集(1)
 
 ゲーテの言葉はあまたの文学者に影響を与えていったと思います。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンとも親交が深かった力強い作家で、そういう人間の言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは近代でもっとも有名な詩人で、神話的な詩と恋愛の詩が魅力だと思います。
  

0000 - ゲーテ詩集(1)

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
 
全文を読むにはこちらをクリック

自伝 黒島傳治

 今日は、黒島傳治の「自伝」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは黒島傳治の出自について当人が書いている、ごく短い随筆です。農業と漁業をやっていた家で育っていった。近代の戦争の状況も描いています。
「大正八年に兵隊にとられ、それからシベリアへやられた。そこで病気にかゝって、大正十一年四月内地へ帰り、七月除隊になった。」と記しています。こののち二十五年間の、帝国日本軍の兵站に於ける問題についてすこし調べてみました。wikipediaによると大戦中には世界的に飢饉も深刻だったという記録がいろいろありました。

0000 - 自伝 黒島傳治

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
 

古江 高濱虚子

 今日は、高濱虚子の「古江」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 水売舟というのは、水を売っている船だそうで、日本でも飲料水を売る仕事というのがあったそうです。
 どこのはなしなのかというと、どうも長良川の河口の長島のはなしのようで、この小さな小島はあたかもヴェネチアのような、日本の水上都市だったようです。
 金だらいをつかって、川辺で洗濯をしている風景。当時の女の仕事を、高浜虚子が記しています。
 舟がてきとうに放置されている、下駄を脱ぎ捨てたかのように、置かれている。そういう風景画でした。

0000 - 古江 高濱虚子

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
 

こころ 夏目漱石(下巻)

 今日は、夏目漱石の「こころ」下巻を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  「こころ」は今回で完結です。
 漱石と言えば「坊っちゃん」や「草枕」のように、親族と無縁なところをみごとに描ききる、血縁から自由なところにその創作の魅力があるとぼくは思うんですが、こんかいは家で生じる不和が大きな題材になっています。
 ぼくはこの小説をあまり真面目に読めなかったんですけれども、先生はどういう人生を歩んできたのかというので、親族との関係が妙なことになった、新しい家族を形成する時に、通常の展開と異なっていた、というのが気になりました。
 両親の亡くなった実家をどう引き継ぐかというので、叔父は「従妹と結婚」をして家も引き継いでくれというように頼んでくる。これを先生はすっかり断って、従姉妹は泣いてしまった。ここから話しがおかしくなってゆく。遺産もどうも持ってゆかれた。
 地縁を捨てて東京で新しく生きようという先生が、しかしながら東京でも家族をもうけようというときに、重大な問題が起きてしまった。未読の方は本文だけを読んでもらいたいんですが……現代の芸能界風に言うとようするに、結婚式の1日前に致命的な不倫をしてしまった、というような話しで、不倫を行う男の心理が、この本を読んでいるとなんだか理解できてくるように思います。漱石はもっと上品ですから、不倫の気配はいっさい出てこないんですけど、恋愛や結婚を巡っての裏切りが中心に描かれます。
 ちょっとこうどうもぼくには分からないのは、先生はとくに不義理をしていないと、自分には思えるんです。先生は妻を不幸にするのが目に見えているのに、自分で自分の罪を告白して不必要に自責しているわけで、鈍い自分にはそれがどうも理解できない。Kにたいする批評に見せかけた人格攻撃というのが生じていてそこはやはり不味いようには思うんですが。
 ぼくが思ったのは、この小説では、住空間の不可思議が描かれているというように感じました。旧友Kとお嬢さんと私(先生)の3人は、3人とも無関係な家の他人同士なんですが、ふすま一枚へだてた住空間に生きていた。空間が妙なんです。父が消えた実家の空間も奇妙なことになっていた。
 むかし読んだときは、Kというのが漱石の友人なんじゃないかと思ったんですけど、Kの性格は漱石が悩んでいる時期に似ているように思いました。
 Kが最初に現れるのは下巻19の、全体の65%あたりのところからで、合計411回も記載されています。
 再読をしてみて思ったのは、私(先生)が旧家で受けた所行と、Kに対して行った不味い所行には、まあまあ共通項があって、彼の将来を慮ってやったことが、のちのちの歪な事件の原因になっているんです。ほんとに浅い読み方になってしまったんですけれども、収支をちゃんと明解にするとか、住空間を整えてプライバシーに配慮するというのは、大事なことなんだなあと思いました。
 この作品の終盤を読んでいると、漱石が短い期間にとてつもない長編の数々を記していった、その事実と迫力を感じます。
 「こころ」では現代にも起きている、日本の暗い側面が記されているように思います。「私は妻に残酷な驚怖を与える事を好みません」と記しているところに大きな矛盾があって、どうもぼくはこの小説はよく分からなかったです。この漱石の「こころ」にかんしては、坂口安吾が批判を行っていて、これがもっとも参考になると思うんです。「こころ」について考えてみたい、という方は、ぜひ安吾の文学論に於ける漱石批判を読んでみてください。
 

0000 - こころ 夏目漱石(下巻)

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約100頁 ロード時間/約3秒)
 
「こころ」上巻・中巻・下巻の全文をはじめから最後まで通読する(※大容量で重いです)
 

旅からのはがき 水野葉舟

 今日は、水野葉舟の「旅からのはがき」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 花巻から遠野にむけて一人旅をしている、そこから出される手紙について、水野葉舟が記しています。遠野の奥地にいって、ちょっと方言が色濃すぎて言葉が聞きとれない……。水野葉舟は、柳田国男とも縁のある、怪談で有名な近代作家です。

0000 - 旅からのはがき 水野葉舟

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
 

温泉 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「温泉」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 梶井基次郎以外に、いろんな近代文学を読んでみたのですけれども、梶井基次郎の描写はほかと比べものにならないくらい、細部までじっくり書きあげていて、とても空想で書いたものに思えないんです。動画で撮ってもここまで環境や人工物や人の流れ、それからそれぞれの内情まで書けないわけで、梶井基次郎の描写はそれらを越えて詳細なんです。
 じつは行ったことがない架空の場所であってもおそらく梶井基次郎はここまで描けてしまうんだろうと思う箇所があるんです。「これはすばらしい銅板画のモテイイフである」と記している。風景の描写に混ぜるように空想も記している。おそらくこれは梶井が1年半ほど療養のために暮らした伊豆の「湯ヶ島」での実体験を元にした紀行文だとは思うんですけれども、あるいは銅版画を見てその風景の奥に聳える暗闇まで描けるのが、梶井基次郎だろうと思いました。
 車窓から旅先の田園風景を一瞬かいま見ても、その地を知ったことにはならないわけで、ちょうどその対極にいるのが梶井基次郎のように思いました。梶井は見知らぬ村の家々の暮らしまで描きだしているのがすごいなと思いました。
 崖を見て、その数十年前の豪雨やのちの水害について思いを馳せている。いまの風景を描写するだけでは無くって、数年前の風景まで見ていて、見えているものがぜんぜんちがうんだなあ……と思いました。耕作のために泥まみれになった馬が、農民に導かれ温泉の湯で洗われてきれいな姿になっている。川烏や懸巣の描写が美しい、すてきな随筆でした。
 

0000 - 温泉 梶井基次郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)