あそび 森鴎外

 今日は、森鴎外の「あそび」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは官吏の日常を描いた、小説なんです。軍人でありながら、仕事とはべつに芸術をつくっていった森鴎外の、独特な眼差しがあるように思いました。木村という主人公も、公務員でありながら文学芸術をやっている。作中で、ヘルマンバールルーズベルトのことをちょっと論じていました。
 主人公の木村は「始終晴々としている」んです。おもしろいこともない場面で楽しんで暮らしている。べつに自他をあざむいているわけではない。なぜなのか。
 学校の暗記の勉強とかを楽しそうにやっている、煩雑な仕事をいつも笑いながらやっている人がじっさいに居ますけど、そういう人の心理状態が、森鴎外によって記されていて、なるほどと思うところがありました。
 

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老夫婦 黒島傳治

 今日は、黒島傳治の「老夫婦」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 黒島伝治の作品は、小説と言うよりも、ドキュメンタリーかなにかの実話を文章化したような構成で、リアルなんです。
 貧しい家の子供が、学問をやりたい、学資をもらいたいと頼んできている。両親は農業でけんめいに稼いでおり資金上は苦労が絶えないのですが、子供が学問に打ちこんでいることを嬉しく思っている。だがその清三が病に臥してしまった。そのあとなんとか卒業して東京の会社に就職することができ、結婚もした。老夫婦は田舎の仕事を畳んで、東京の息子のところで暮らすことにした。
 これまでの野良仕事を思いだして、狭いところで庭いじりをしたりする。これが本格的すぎて、肥を肥料にしたりする。庭がふんぷんと匂ってしまう。この老夫婦がなんだかおもしろい。冬が明けてやっと東京見物をする。ところが休日も息子は仕事関係の付き合いで忙しい。土埃の舞うような東京の都心の、猛烈な人だかりの中で、夫婦二人で物見遊山してもどうもぐったりするだけである。それでこの二人の考える、こういうほうが良い、自分の仕事ができる場が良い、というオチのところの思いが、ずいぶん腑に落ちました。
 

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野分(2) 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「野分」その(2)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 12回にわけて、漱石の野分を読んでいるところなんですけど、今回、若い物書きの高柳君とその友人の中野君が登場します。作中の人物解説はこうです。
quomark03 - 野分(2) 夏目漱石
 高柳君は口数をきかぬ、人交ひとまじわりをせぬ、厭世家えんせいかの皮肉屋と云われた男である。中野君は鷹揚おうような、円満な、趣味に富んだ秀才である。quomark end - 野分(2) 夏目漱石
 
 第1話に出てきた白井という文学者は、十数人がかりの子どもたちにいじめられて、学校を辞めさせられてしまった。どうもこれを先導した中学の先生がいるようである。このあたりは坊っちゃんでも描かれたユーモアのある展開も、あるんです。
 ホルマン・ハントの絵画を鑑賞しながら、空想小説を書いたら良い、と親友に語る……。作中で、小説を書く時の考え方を記しているんです。どういう小説を書きたいかというと「痛くっても、苦しくっても、僕の内面の消息にどこか、触れていればそれで満足するんだ」と、このあとの議論が興味深かったです。
 これが漱石の文学論と言えるのか、あるいは無名で間の抜けた若者の頼りない考えなのか、よくわからない。虚実のグラデーションが入り混じっていて、虚そのものでもない、実そのものでもない、曖昧な領域でものの考えが記されていて、そこに魅力を感じました。
 

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雨粒 石原純

 今日は、石原純の「雨粒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは科学の随筆なんですけれども、霧箱というものが登場します。この随筆のもう少しのちの一九五〇年ごろには泡箱というのが米国で発明されて、これでノーベル賞を得るような新発見があった、というのを知りました。
 

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俳句上の京と江戸 正岡子規

 今日は、正岡子規の「俳句上の京と江戸」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 正岡子規が京都と東京の俳句の違いを記しています。
 漱石の言葉づかいと、親友の子規の言葉づかいは、時代がまったく同じなのになんだかちがうんです。江戸、という言葉一つをとっても、漱石は『江戸川』とか『江戸名所図絵』ということを記す時くらいしか使わないんです。いっぽうで子規は東京のことを江戸、江戸、と記します。俳句の研究を通して古典文学を学んでいった子規と、英文学を学びながら新しい小説を書いていった漱石とで、言葉の考え方がかなり違うようです。
 東京、東京府、という言葉を使いはじめたのは明治の始まりの頃なんです。
 漱石はこれを気に入っていたようで、東京という言葉を多用しています。
 漱石の「こころ」では、東京という言葉が七十四回も使われているのに、江戸という言葉はたったの一回しか使っていない。
 子規はこの随筆で「江戸」を八十七回も記していていちども東京と書かない。
 ちょっと、種ふくべ、にかんする俳句を調べてみると、漱石と子規と虚子でこういう俳句がありました。
 
 誰彼にくれる印や種瓢 高浜虚子
 恩給に事を欠かでや種瓢 夏目漱石
 くりぬいて中へはいらん種ふくべ 正岡子規

 

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晶子詩篇全集拾遺(59)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(59)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
「心の奥の薔薇」という詩の言葉のそばに配置された物象が、不思議に印象的な……日常と街と心象を活写した三つの作品でした。
 

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