今日は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「年とったカシワの木のさいごの夢」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
これはアンデルセンの代表的な童話で、題名どおりカシワの木が主人公で、生き物たちと話しこんだり、眠ったり、祈ったりする物語です。クリスマスの美しい情景とともに描きだされる、自然界のいのちのありさまを記す童話でした。
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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
ぼくはこれをほとんど初見で読んで、アンデルセンの諸作の中でも、とくに優れた物語に思いました。子どもが読むための本なんですが、本作は大人が読める内容になっているように思いました。自然界の描写が現代人とは比べものにならないほど念入りに描かれていて、それが生きものの生老病死と繋がって記されるもので、秀逸な小説だというように思う作品でした。とくに前半に登場する、ほんの1日だけしか生きられないカゲロウと、数百年も生きるカシワの木の、心温まる会話劇がみごとであるように思いました。カゲロウの思いというのが、さいごのカシワの思いとも繋がっていて、作中の発言にあるように「わしの愛するものは、みんな、いっしょなのだ。小さいものも、大きいものも。みんな、いっしょなのだ」というところに印象深く響いてくる、クリスチャンの童話らしい童話というように思う作品でした。老いたアンデルセンがこの物語の中で生き生きと語っているような、童話に思いました。