今日は、アンデルセンの「人魚のひいさま」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
これはアンデルセンの中編小説で、人魚のお姫さまの6人姉妹の「ひいさま」たちのなかの、いちばん年下のひいさまが、15歳になってはじめて海の底から出て、人間たちの世界を見にゆく、幻想的な物語です。
人魚は妖しい声で、人々を海の底にいざなうわけですが、ひいさまはこの美しい声を失って、土の上で生きるようになるのです。
ひいさまは結婚さえできれば、死なないたましいを手に入れられて、王子様と幸福に生きられるはずなのですが……。
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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
ここからはネタバレ注意なので、近日中に読み終える予定のかたは、先に本文を読むことをお勧めします。
荒海で誕生日を祝っていた王子様が、海にのまれて遭難し、人魚のひいさまは海の中で気を失ってしまった王子様を助けて、大波を耐えしのぎ、砂の上にかえしてあげるのでした。
王子様は、自分が誰に助けられたのかを知らぬまま、生きてゆくのですが、海の底のひいさまは、人間のことがよりいっそう好きになってゆくのでした。
王子様との恋を成就するために、人魚のひいさまは魔女に頼んで、人間の世界で生きられる足をもらいにゆくのです。魔女に声をすべて奪われていて、なにも話すことが出来なくなったひいさまは、王子とふたたび出会って、ともに生きる未来を手に入れたのでした。
王子様はこのひいさまと恋仲となって「ずっと一緒に居ようね」と約束するのに、家の事情やいろいろなことがあって結婚はできないのでした。そのうち王子様は、隣の国のものと政略結婚をすることになるのです。
アンデルセンの童話には、結婚の寸前のところでこれが妨げられるという事態が描かれることが多いように思います。
ここから、おばあさまが人魚のひいさまに、人の一生について語ってゆくのですが、人間の寿命や、そのあとにものこる人のたましいの話しが美しく、みごとな童話に思いました。
ひいさまのお姉さまたちは魔女に頼んで、死の呪いから放たれる短刀を手に入れ、これをひいさまに手渡すのでした。ひいさまは短刀を投げ捨てて、終わりの時を抱えつつ海へと帰り、空にただよういのちに生まれかわり、新しい日々へと向かうのでした。本文こうです。
「どこへ、あたし、いくのでしょうね。」と、人魚のひいさまは、そのときたずねました。その声は、もうそこらにうきただよう気息のなかまらしく、人間の音楽にうつしようのない、たましいのひびきのようになっていました。
この文の前後の「たましい」の描きかたにアンデルセンの童話ぜんたいの核心があるように思いました。「生まれてはじめての涙を目にかんじました。」という一文が印象に残りました。「人魚のひいさま」の全文はこちら。