今日は、寺田寅彦の「科学者とあたま」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
物理学者の寺田寅彦が、科学者に必要な性格について語っています。科学者は頭が良いだけじゃなくって、頭の悪さ、みたいなものを持っていないといけない、というはなしで本文にこう書いていました。
いわゆる頭のいい人は、言わば足の早い旅人のようなものである。人より先に人のまだ行かない所へ行き着くこともできる代わりに、途中の道ばたあるいはちょっとしたわき道にある肝心なものを見落とす恐れがある。頭の悪い人足ののろい人がずっとあとからおくれて来てわけもなくそのだいじな宝物を拾って行く場合がある。
寺田寅彦が科学と言っているとき、それはたいてい自然科学のことを言っているんだなと思って、なんだが得心がいった箇所がありました。寺田寅彦を精読してきた科学者なら、原発のどこに問題があるのかも、事前にわかっていたんだろうなと、思いました。本文こうです。
頭のよい人は、あまりに多く頭の力を過信する恐れがある。その結果として、自然がわれわれに表示する現象が自分の頭で考えたことと一致しない場合に、「自然のほうが間違っている」かのように考える恐れがある。まさかそれほどでなくても、そういったような傾向になる恐れがある。これでは自然科学は自然の科学でなくなる。一方でまた自分の思ったような結果が出たときに、それが実は思ったとは別の原因のために生じた偶然の結果でありはしないかという可能性を吟味するというだいじな仕事を忘れる恐れがある。
ほかにも「頭のいい人には恋ができない。恋は盲目である。科学者になるには自然を恋人としなければならない。自然はやはりその恋人にのみ真心を打ち明けるものである。」と書いていました。
災難雑考 寺田寅彦
今日は、寺田寅彦の「災難雑考」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
これは科学者の寺田寅彦が、天災と人災とを検討した随筆です。
このミニコラムは2019年10月11日の21時10分に書いているのですが、台風19号による大規模な雨量が予想されるそうです。日本気象協会の専門家吉田氏が天気予報サイトに、こう書いていました。「予想雨量は800ミリ」で、「台風19号は12日(土)の夕方から夜に東海や関東に非常に強い勢力で上陸する見込み」で「自治体から出される避難情報に注意」……するよう呼びかけていました。くわしくはこちらをご覧ください。
……それで、百年前の寺田寅彦は、こう記します。
「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考えなければならない。現象のほうは人間の力でどうにもならなくても「災害」のほうは注意次第でどんなにでも軽減されうる可能性があるのである。
寺田寅彦は検証と改善が人災を防ぐ重要な要素だと指摘しています。百年後の現代に読んでも、重要なことが書いてあるように思いました。