ハイネ詩集 生田春月訳

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ハイネ詩集
生田春月 訳
 
 
 
巴里竹枝 其他
 

  その五

おまへがどんなにわたしを欺したか
誰にも他人 ひとには告げなかつたが
わたしは海へ出かけて行つて
魚にすつかり話して置いた

をかぢや隠してやつたゆゑ
おまへの手管てくだを知るまいが
しかしあの広い海中うみぢうぢや
おまへの不実を知つてゐる
 

  その六

海の中へ突出したルウネ石の上に
わたしは夢想を抱いてすわつてゐる
風は鳴りさわぎかもめはさけぶ
波はさか巻き泡は立つ

わたしも昔はたくさんの美しい子や
たくさんのいゝ友逹を愛してゐた——
今彼等は何処へ行つたらう?風は鳴り
泡は立ち波はさか巻く

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
底本:「ハイネ詩集」(新潮文庫、第三十五編)
新潮社出版、昭和八年五月十八日印刷、昭和八年五月廿八日發行、
昭和十年三月二十日廿四版。
生田春月(1892-1930年) 
「ハイネ詩集」(Heinrich Heine, 1797-1856年)
入力:osawa
編集:明かりの本
2017年7月7日作成
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