ハイネ詩集 生田春月訳

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ハイネ詩集
生田春月 訳
 
 
 
ジョラントとマリイと

ふたりともやさしく愛らしい
どちらを愛したものだらう?
母親はまだ美しい女だし
娘は美しい子だもの

あの白いおぼこな身体からだを見ると
大層心を動かされる!
けれども男の愛に答へる道を知つてゐる
この気の利いた眼も素敵ぢやないか

わたしの心はあの灰色の友逹に似てゐる
ふたつの乾草の束を見くらべて
どちらの飼葉かひばがうまいだらうと
思案をしてゐるあの驢馬に

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
底本:「ハイネ詩集」(新潮文庫、第三十五編)
新潮社出版、昭和八年五月十八日印刷、昭和八年五月廿八日發行、
昭和十年三月二十日廿四版。
生田春月(1892-1930年) 
「ハイネ詩集」(Heinrich Heine, 1797-1856年)
入力:osawa
編集:明かりの本
2017年7月7日作成
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