ハイネ詩集 生田春月訳

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ハイネ詩集
生田春月 訳
 
 
 
小唄
 

  二十五

子犬よ、わたしはおまへが好きなのを
おまへはよく知つてゐるだらう
砂糖を御馳走してやると
おまへはわたしの手をめる

おまへはたゞ犬といふので満足してゐる
自分以上の者に見せかけようとしない
それにおまへを除いたわたしの友逹は
みなあんまりてらつてよろしくない
 

  二十六

ほんとにさうだ、さうだ、もし我々が
わかくなかつたら、その忠告はよかつたらう!
我々はかまはず飲んではまたついで
杯を打合はせよう、女はお入りなさいと言つてくれる!

一人の女が我々をしりぞけようと
ほかの女が招いてくれる
そしてこの杯を乾したとて
おい、ラインの岸にはまだどつさり生えてるぜ!
 

  二十七

愛と憎みと、憎みと愛と
のこらずわたしの胸に来る
だがその一つさへも残らない
わたしはやつぱりもとの儘

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
底本:「ハイネ詩集」(新潮文庫、第三十五編)
新潮社出版、昭和八年五月十八日印刷、昭和八年五月廿八日發行、
昭和十年三月二十日廿四版。
生田春月(1892-1930年) 
「ハイネ詩集」(Heinrich Heine, 1797-1856年)
入力:osawa
編集:明かりの本
2017年7月7日作成
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