ハイネ詩集 生田春月訳

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ハイネ詩集
生田春月 訳
 
 
 
かしこい星

花は人間の足の直ぐ届くところにある為に
大抵はみな踏まれてしまふ
通りすぎるとき彼等は遠慮なく踏みにじる
弱々しい花もしぶとい花も

真珠は海の箪笥にしまつてある
けれども人間はそれをも探し出し
穴を穿つて桎梏くびきにつないでしまふ
絹紐の桎梏くびきにつないでしまふ

星はかしこい、利巧にも
我々の地球から身を遠ざけてゐる
天上高く世界の灯明のやうに
星は永遠に危なげなしにかゝつてゐる

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
底本:「ハイネ詩集」(新潮文庫、第三十五編)
新潮社出版、昭和八年五月十八日印刷、昭和八年五月廿八日發行、
昭和十年三月二十日廿四版。
生田春月(1892-1930年) 
「ハイネ詩集」(Heinrich Heine, 1797-1856年)
入力:osawa
編集:明かりの本
2017年7月7日作成
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