与謝野晶子詩歌集

2018/12/16

与謝野晶子詩歌集1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夜のちやうにささめき尽きし星の今を下界げかいの人の鬢のほつれよ 
 
歌にきけな誰れ野の花に紅きいなむおもむきあるかなはるつみもつ子 
 
 
 
 
 
 
 
  草と人 
 
如何いかなれば草よ、 
風吹けば一方ひとかたに寄る。 
人の身はしからず、 
おのが心の向き向きに寄る。 
なにき、なにしき、 
知らず、だ人は向き向き。 
 
 
 
 
 
 
 
  鼠 
 
わがいへの天井にねずみめり、 
きしきしと音するは 
のみとりて像をきざむ人 
も寝ぬがごとし。 
またその妻と踊りては 
廻るひびき 
競馬のきほひあり。 
わが物書く上に 
屋根裏の砂ぼこり 
はらはらと散るも 
彼等いかで知らん。 
されど我は思ふ、 
我はねずみと共にめるなり、 
彼等に食ひ物あれ、 
よき温かき巣あれ、 
天井にあなをもけて 
折折をりをりに我をのぞけよ。