伊豆の海岸にて
石垣の上に
そして、また、上に石垣、
千年の「時」が
大きな
どの石垣の
青銅のやうに光る葉、
小柄な
笑つた口のやうな
石垣の崩れた
山の
下には海に沈んだ
浅瀬の水を
沖の
その度に、近い所で
石垣の
落ちた花がぼたりと水に浮く。
田舎の春
正月
喜びありて眺むれば、
まだ
向ひの丘を過ぎながら
高い
ちらり、ほらりと梅が咲く。
上には晴れた空の色、
濃いお
光、光と
春が
枝に掛けたか、
ちらり、ほらりと梅が咲く。
太陽出現
薄暗がりの地平に
大火の祭。
空が焦げる、
海が燃える。
子供らしい
地上の山山。
今、
世界に降らす
太陽が現れる。
(つづく)
底本:「晶子詩篇全集」実業之日本社
1929(昭和4)年1月20日発行
「定本 與謝野晶子全集 第九巻 詩集一」講談社
1980(昭和55)年8月10日第1刷発行
「定本 與謝野晶子全集 第十巻 詩集二」講談社
1980(昭和55)年12月10日第1刷発行
「みだれ髪」名著複刻全集 近代文学館、日本近代文学館
1968(昭和43)年12月発行
※ このファイルは、青空文庫で作成されたものを編集し再構成しています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」を、大振りにつくっています。
入力:武田秀男 田中哲郎
校正:kazuishi 富田倫生
構成:明かりの本
ファイル作成:
2004年6月24日作成
2012年3月23日修正
2018年12月17日構成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られたファイルを元に再構成しました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。