与謝野晶子詩歌集

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雨みゆるうき葉しらはす絵師の君に傘まゐらする三尺の船 
 
御相みさういとどしたしみやすきなつかしき若葉わかばだちなか盧遮那仏るしやなぶつ 
 
 
 
 
 
 
 
  我歌 
 
求めたまふや、わが歌を。 
かかるさびしきわが歌を。 
それは昨日きのふひとしづく、 
底に残りし薔薇ばらの水。 
それはとせのひとかけら、 
砂にうもれし青きたま。 
 
 
 
 
 
 
 
  憎む 
 
憎む、 
どの玉葱たまねぎひやゝかに 
我を見詰めて緑なり。 
 
憎む、 
その皿の余りに白し、 
寒し、痛し。 
 
憎む、 
如何いかなれば二方にはうの壁よ、 
ひ合せて耳を立つるぞ。