与謝野晶子詩歌集

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ひと枝の野の梅をらば足りぬべしこれかりそめのかりそめの別れ 
 
鶯は君が夢よともどきながら緑のとばりそとかかげ見る 
 
 
    × 
韻がひびかぬ、死んでゐる、 
それでしきりに書いてみる。 
皆さんの愚痴、おのが無智、 
れがのぞいた垣のうち、 
戸は立てられぬ人の口。 
    × 
泥の郊外、雨が降る、 
れたかまどに木がいぶる、 
踏切番が旗を振る、 
ぼうぼうとした草の中 
屑屋くづやも買はぬ人のふる。 
    × 
指のさはりのやはらかな 
青い煙のにほやかな、 
好きな細巻、名はDIANA《デイアナ》。 
命のやみに火をつけて、 
光る刹那せつなの夢の華。