与謝野晶子詩歌集

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紫の紅のしたゝり花におちて成りしかひなの夢うたがふな 
 
ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清瀧きよたき夜の明けやすき 
 
    × 
青い空から鳥がくる、 
野辺のべのけしきは既に春、 
細い枝にも花がある。 
遠い高嶺たかねと我がこころ 
すこしの雪がまだ残る。 
    × 
つちを上げる手、くは打つ手、 
扇を持つ手、筆とる手、 
炭をつかむ手、を抱く手、 
かげに隠れてだひとつ 
見えぬは天をゆびさす手。 
    × 
高い木末こずゑに葉が落ちて 
あらはに見える、小鳥の巣。 
鳥は飛び去り、冬が来て、 
風が吹きまく砂つぶて。 
ひろい野中のなかの小鳥の巣。