紫の紅の滴(したゝ)り花におちて成りしかひなの夢うたがふな ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清瀧(きよたき)夜の明けやすき × 青い空から鳥がくる、 野辺(のべ)のけしきは既に春、 細い枝にも花がある。 遠い高嶺(たかね)と我がこころ すこしの雪がまだ残る。 × 槌(つち)を上げる手、鍬(くは)打つ手、 扇を持つ手、筆とる手、 炭をつかむ手、児(こ)を抱く手、 かげに隠れて唯(た)だひとつ 見えぬは天をゆびさす手。 × 高い木末(こずゑ)に葉が落ちて あらはに見える、小鳥の巣。 鳥は飛び去り、冬が来て、 風が吹きまく砂つぶて。 ひろい野中(のなか)の小鳥の巣。