与謝野晶子詩歌集

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なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな 
 
おばしまにおもひはてなき身をもたせ小萩をわたる秋の風見る 
 
 
    × 
鳥屋が百舌もずを飼はぬこと、 
そのひと声に百鳥ももどりが 
おそれておしに変ること、 
それに加へて、あの人が 
なぜか折折をりをりだまること。 
    × 
さかしに植ゑた戯れに 
あかい芽をふくつゑがある。 
指を触れたか触れぬに 
石からにじが舞ひあがる。 
寝てゐたへうの目が光る。 
    × 
われにつれなき今日けふの時、 
花を摘み摘みき去りぬ。 
だやさしきは明日あすの時、 
われにせんと、光るきぬ 
とせをかけて手に編みぬ。 
    × 
がらすを通し雪が積む、 
こころのさんに雪が積む、 
いて見えるは枯れすすき、 
うすい紅梅こうばい、やぶつばき、 
青いかなしい雪が積む。