与謝野晶子詩歌集

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臙脂色えんじいろは誰にかたらむ血のゆらぎ春のおもひのさかりのいのち 
 
紫の濃き虹説きしさかづきにうつる春の子眉毛まゆげかぼそき 
 
 
 
 
 
 
 
  おのみち 
 
わがみち常日頃つねひごろ 
三人みたり四人よたりとつれだちぬ、 
また時として一人ひとり。 
 
一人ひとりく日も華やかに、 
三人みたり四人よたりくときは 
更にこころのたのしめり。 
 
我等はりぬ、おのみち、 
ひとすぢなれどおのみち、 
けはしけれどもおのみち。 
 
 
 
 
 
 
 
  また人に 
 
病みぬる人は思ふこと 
身のやまひをばきとして 
すべてを思ふ習ひなり。 
我は年頃としごろ恋をして 
世の大方おほかたのちにしぬ。 
かかる立場のがたし、 
人に似ざれと、かたよれど。