与謝野晶子詩歌集

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師の君の目を病みませるいほの庭へうつしまゐらす白菊の花 
 
文字ほそく君が歌ひとつ染めつけぬ玉虫たまむしひめし小筥こばこふたに 
 
 
 
 
 
 
 
 
  梅蘭芳に 
 
うれしや、うれしや、梅蘭芳メイランフワン 
今夜、世界は 
(ほんに、まあ、華美はで唐画たうぐわの世界、) 
真赤まつかな、真赤まつかな 
石竹せきちくの色をしてにほひます。 
おお、あなた故に、梅蘭芳メイランフワン、 
あなたのうつくしい楊貴妃やうきひゆゑに、梅蘭芳メイランフワン、 
愛にこがれた女ごころが 
この不思議なかんばしい酒となり、 
世界をひたして流れます。 
梅蘭芳メイランフワン、 
あなたもつてゐる、 
あなたの楊貴妃やうきひつてゐる、 
世界もつてゐる、 
わたしもつてゐる、 
むしやうに高いソプラノの 
支那しな鼓弓こきうつてゐる。 
うれしや、うれしや、梅蘭芳メイランフワン。