与謝野晶子詩歌集

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蟻の歌 
   (少年雑誌のために) 
 
 
 
ありよ、ありよ、 
黒い沢山たくさんありよ、 
お前さん達の行列を見ると、 
8《はち》、8《はち》、8《はち》、8《はち》、 
8《はち》、8《はち》、8《はち》、8《はち》…… 
幾万と並んだ 
8《はち》の字の生きた鎖が動く。 
 
ありよ、ありよ、 
そんなに並んで何処どこく。 
行軍かうぐんか、 
運動会か、 
二千メエトル競走か、 
それとも遠いブラジルへ 
移住してく一隊か。 
 
ありよ、ありよ、 
繊弱かよわな体で 
なんと活撥くわつぱつなことだ。 
全身を太陽に暴露さらして、 
疲れもせず、 
なまけもせず、 
さつさ、さつさと進んでく。 
 
ありよ、ありよ、 
お前さん達はみんな 
可愛かはいい、元気な8《はち》の字少年隊。 
くがよい、 
くがよい、 
8《はち》、8《はち》、8《はち》、8《はち》、 
8《はち》、8《はち》、8《はち》、8《はち》………