与謝野晶子詩歌集

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細きわがうなじにあまる御手みてのべてささへたまへな帰る夜の神 
 
清水きよみづ祇園ぎをんをよぎる桜月夜さくらづきよこよひ逢ふ人みなうつくしき 
 
 
 
 
 
 
 
  岬 
 
じやうしまの 
岬のはて、 
さゝしげり、 
黄ばみてれ、 
その下に赤ききりぎし、 
近きみぎは瑠璃るり、 
沖はコバルト、 
ここに来てしばすわれば 
春のかぜ我にあつまる。 
 
 
 
 
 
 
 
  静浦 
 
トンネルを又一つでて 
海の景色かはる、 
心かはる。 
静浦しづうらの口の津。 
わがけいする龍三郎りゆうざぶらうの君、 
幾度いくたびこの水をたまへり。 
切りたる石は白く、 
船に当る日は桃色、 
いそみちつつ曲る、 
なほしばしあゆまん。