細きわがうなじにあまる御手(みて)のべてささへたまへな帰る夜の神 清水(きよみづ)へ祇園(ぎをん)をよぎる桜月夜(さくらづきよ)こよひ逢ふ人みなうつくしき 岬 城(じやう)が島(しま)の 岬のはて、 笹(さゝ)しげり、 黄ばみて濡(ぬ)れ、 その下に赤ききりぎし、 近き汀(みぎは)は瑠璃(るり)、 沖はコバルト、 ここに来て暫(しば)し坐(すわ)れば 春のかぜ我にあつまる。 静浦 トンネルを又一つ出(い)でて 海の景色かはる、 心かはる。 静浦(しづうら)の口の津。 わが敬(けい)する龍三郎(りゆうざぶらう)の君、 幾度(いくたび)か此(この)水を描(か)き給(たま)へり。 切りたる石は白く、 船に当る日は桃色、 磯(いそ)の路(みち)は観(み)つつ曲る、 猶(なほ)しばし歩(あゆ)まん。