初春(はつはる) ひがむ気短(きみじ)かな鵯鳥(ひよどり)は 木末(こずゑ)の雪を揺りこぼし、 枝から枝へ、甲高(かんだか)に 凍(い)てつく冬の笛を吹く。 それを聞く わたしの心も裂けるよに。 それでも木蔭(こかげ)の下枝(しづえ)には あれ、もう、愛らしい鶯(うぐひす)が 雪解(ゆきげ)の水の小(こ)ながれに 軽く反(そり)打つ身を映し、 ちちと啼(な)く、ちちと啼(な)く。 その小啼(ささなき)は低くても、 春ですわね、春ですわね。 仮名文字 わが歌の仮名文字よ、 あはれ、ほつほつ、 止所(とめど)なく乱れ散る涙のしづく。 誰(たれ)かまた手に結び玉(たま)とは愛(め)でん、 みにくくも乱れ散る涙のしづく。 あはれ、この文字、我が夫(せ)な読みそ、 君ぬらさじと堰(せ)きとむる しがらみの句切(くぎり)の淀(よど)に 青き愁(うれひ)の水渋(みしぶ)いざよふ。